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ほとんどの目標管理がうまくいかない理由

  • カテゴリ:ノーレイティング(No Rating)

いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。

このブログでは、人事制度の具体的な「方法論」よりも、ノーレイティング型人事制度や自己申告型給与制度の根底に流れている「価値観」や「世界観」について書くことが多くなっています。

なぜなら、後者の方が大切だと考えているからです。

どのような制度も、そこに込められた価値観や世界観をしっかり理解していなければ、当初の目的とは違った方向に一人歩きしてしまいます。

しかし、具体論が大切でないとも思っておらず、私のような実務家の使命は、想いや信念を具体的な仕組みにしていくことだと思っています。

というわけで今回から何回かは、少し具体的な方法論について書いてみようと思います。

 

目標管理が社員さんの意欲を奪っている

 

社員さんが目標設定し、その実績によって人事評価が行われる制度は、多くの企業で導入されています。

目標設定と評価の仕組みの呼び方については、目標管理、MBO、OKRなどさまざまありますが、その実績によってある期間の社員さんの貢献に点数を付ける仕組みのことを、ここでは「目標管理制度」と呼ぶことにします。

目標管理制度は、多くの場合で本来の機能を果たしていません。

本来の機能とは、社員さんのモチベーション向上と成長の促進です。

目標を社員さん自らが設定し、その実績に応じて報酬が決まる仕組みがあれば、社員さんのモチベーションが高まるように思えてしまいます。

また、社員さんが自分で目標を設定し、その管理を自分で行うことは、社員さんの成長につながっていくようにも思えます。

しかし、実際にはそうなっていません。

その大きな原因は、目標の「達成率」が給与に連動することにあります。

社員さんからみると、目標管理の本来の目的である「目標を立てて自分の仕事を管理する」のではなく、「目標によって企業に管理されている」ように映っているからです。

これまで何回も述べてきたように、金銭的報酬が「内発的動機づけ」を阻害し、仕事への意欲を失わせているのです。

 

目標管理のスキルは習得に時間がかかる

 

その他にも、目標管理を実行することが難しいことがあります。

目標管理のフレームワークにはさまざまなものがありますが、代表的なのはPDCAサイクルです。

P(計画)・D(実行)・C(真因分析)・A(解決策立案)というサイクルを回して仕事の質を高めていくこと自体が、習得に時間がかかるスキルなのです。

理論的には、PDCAサイクルをうまく回せば、問題がドンドン解決され、成果が継続的に生み出されるはずなのですが、なかなか現実は理論通りにいくものではありません。

加えて、上司側にPDCAサイクルをうまく回すスキルがなければ、部下の指導もできません。

とはいえ、目標管理という考え方が間違っているわけではないと思っています。

仕事を通して得られるPDCAサイクルを回すスキルは、人生をより豊かにするためには必要なものです。

たとえば、多くの人は、人生のなかで結婚し家庭を持つことになると思いますが、家計を健全に営むためには、目標管理のスキルが欠かせません。

健全な家計を営むには、収入と支出のバランスや、将来のための資産形成などの長期的課題を考慮しつつ、適切な目標を設定し、その進捗状況を絶えずチェックし、必要があれば目標や計画を修正することが求められます。

まさしくこれはPDCAサイクルであり、豊かな人生を築くためには、PDCAサイクルを適切に回すスキルが必要です。

PDCAサイクルを回すスキルが習得できる目標管理制度は、社員さん一人ひとりの人生にとって大変有意義な取り組みです。

有意義なはずの目標管理制度が、その本来の価値を発揮できていないのは、先ほども述べたように、目標管理の焦点を「達成率」に合わせているからです。

目標管理が効果を発揮するためには、目標を使って仕事を管理するプロセスを通して得られる「自分の成長」に焦点を合わせるべきです。

 

目標を達成しようという意欲が湧かない理由

 

もう一つ、目標管理制度が機能しない理由としては、社員さんが目標に納得できていないことがあります。

目標が人生ビジョンと結びついていないのです。

だから、本気で目標を達成しようという気になれないのです。

それは目標管理の問題だけではなく、社員さん本人が自律していないことも原因なのですが、

企業から設定された目標を「ただやれ!」では、社員さんが受け身の姿勢になっても仕方がありません。

目標設定に、社員さん一人ひとりの人生ビジョンと「合致しているか」という視点を加える必要があります。

もちろん、社員さんの人生ビジョンと企業が期待する目標が、完全に一致することはまずないでしょう。

だから、目標が社員さんの人生ビジョンと一致しているかについては、暗黙のうちに触れられないままにされてきました。

ほとんどの場合は、目標が企業側からの押し付けであることが、明らかになってしまうからです。

しかし、企業が期待する目標が、社員さんの人生ビジョンと「一致していない」という事実を明らかにするところから、本当の対話は始まるのだと思います。

まずは「一致していない」ということをお互いが認識することが、対話のスタートラインです。

そこからお互いを尊重して対話を続けると、それぞれのビジョンに一致している部分が見つかるはずです。

「完全に一致する」ということは難しいでしょうが、「重なるところが何もない」ということも、今までの経験上あまりありません。

お互いのビジョンが重なったところで目標設定できれば、社員さんも本気で取り組め、企業としても納得のできる目標になります。

それを見つけるまでには、時間と根気が必要となるでしょう。

しかし、それを見つける対話をしなければ、企業と社員さんの関係に変化は現れません。

その対話の場が目標管理制度です。

目標管理制度は、目標を押し付け、社員さんをコントロールするための場であってはならないと思います。

このような価値観で目標管理制度を再構築すると、一般的な目標管理とは違う仕組みになっていきますので、次回に触れたいと思います。

 

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