人件費の常識を変える
- カテゴリ:自己申告型給与制度
自己申告型給与制度に対して、よくいただくご質問に回答させていただいています。
1.社員さんが自分の給与を決められないのではないか?
2.とんでもない給与額の申告が出てくるのではないか?
3.人件費がとんでもなく増えるのではないか?
4.管理職さんの精神的な負担が大きくなるのではないか?
5.社員さんがお金のことばかり考えるようになるのではないか?
というご質問をいただくことが多く、前回は2番目について回答させていただきました。
※前回の記事「とんでもない給与額の申告にどう対応するか?」
今回は、3番目のご質問に回答していきたいと思います。
自分で決めれば自然と責任感が湧く
自己申告型給与制度のお話をすると、
「人件費がとんでもなく増えるんじゃないですか?」
というご質問もいただきます。
今までの経験では、人件費は増えることは増えますが、「とんでもなく」増えるということはありませんでした。
給与を自己申告できるとなると、ほとんどの社員さんは「無責任なことはできない」と思われるのだと思います。
ほとんどの社員さんは、ご自分の貢献度と給与額を照らし合わせて、しっかりと考えてきてくださいます。
「社員の自由にさせると危ない」というような考えで、社員さんの自由を束縛することは、
社員さんの責任感や情熱にフタをすることだと思っています。
とはいえ、人は知識不足や感情の動きで判断を誤ることもありますが、そのような問題が起きたら、本音で対話すればほとんどの問題は解決できると思います。
人件費を「コスト」と見るか、「投資」と見るか
多くの会社では、人件費を「コスト」とみなしていると思います。
どの経営論の本を読んでもそう書いてありますから、人件費がコストだということは「当たり前」だと考えられています。
しかし問題は、人件費をコストと考えると、「なるべく抑えよう」という意識が自然と働くことです。
私は、人件費を「コスト」と考えるのではなく、「投資」とくに「先行投資」だと考えた方がよいと思っています。
たとえば、とても会社にとって貢献の高い業務に新たに取り組もうとする社員さんに対して、「人件費=コスト」と考えると、社員さんの業務で成果や結果が出てから給与を上げるという発想になります。
しかし、人件費を「先行投資」だと考えると、新しい業務に取り組むタイミングで給与を上げることになります。
後者の「人件費=先行投資」の考え方では、会社と社員さんの関係は「パートナー」という位置づけになりますが、
前者の「人件費=コスト」という考え方では、会社の方が強い関係性になります。
どちらを選ぶかは、経営者さんがどんな会社運営をしたいかによりますが、社員さんとパートナーとして進んでいきたいなら、「人件費=先行投資」という考えの方が、しっくりくると思います。
投資の失敗を人事制度に組み込んでおく
人件費を「先行投資」だと考えた時に、あらかじめ覚悟しておく必要があるのは、「投資は失敗することがある」ということです。
投資が失敗すれば「投資を中断する」という判断になりますが、人件費を先行投資だと考えるには、
投資を中断する、つまり「給与を下げる」ということも人事制度に組み込んでおかなければなりません。
よく「賃金の下方硬直性」という議論がありますが、会社と社員さんがパートナーになるためには見直す必要がある考え方です。
先行投資が「既得権益」になっては、会社だけがリスクを引き受けていることになります。
社会に存在するリスク(不確実性)を、どちらか一方だけが負担するのではなく、会社と社員さんの双方が協力してリスクを引き受ける必要があります。
それが、パートナーということです。
このときに、社員さんにも考え方の変革が必要になります。
労働諸法令や社会に一般的に浸透している常識と呼ばれるものは、社員さんができる限りリスクを負わないようになっています。
もっと直接的な表現をすると、会社に「守られている」のです。
さらに問題なのは、「守られている」という意識もなく、それが「当然の権利」だと考えている人が多いことです。
会社と社員さんがパートナーになるためには、社員さんもリスクを引き受けることが必要になります。
そして、経営者さん・管理職さん・社員さんが、役割の違いを超えて全員で協力して進んでいくことが、仕事のなかでの「生きがい」を高めるのだと考えています。
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