お客様の

○○株式会社 ○○様

「対等なパートナー」として「覚悟」を持って対話していく

木村石鹸工業株式会社 
代表取締役社長 木村祥一郎様

お客様情報

社名
木村石鹸工業株式会社
事業内容
家庭用洗剤、業務用洗浄剤、金属表面処理剤の企画開発・製造
所在地
大阪府八尾市北亀井町2-1-30
創業
1924年(大正13年)4月1日
概要
くらし、気持ち、ピカピカ 大正13年創業の老舗石鹸メーカーです。国内で数少ない釜焚きの純石鹸シリーズSOMALIなど、小さい会社にしかできないブランドづくりに日々取り組んでいます。 Forbes JAPAN スモールジャイアンツ アワード2019「ローカルヒーロー賞」受賞。
【EC本店】https://store.kimurasoap.co.jp
【Twitter】https://twitter.com/kimurasoap
【Instagram】https://instagram.com/kimurasoap
【木村社長note】https://note.com/yudemen

1
導入のきっかけ ノーレイティング型人事制度/自己申告型給与制度の導入理由

福留: 当社にお問い合せをいただいたきっかけは何だったんですか?

木村さん: 前職の時からいろんな人事制度をやってたんですよ(補足:木村さんは同社を後継する前にITベンチャーを立ち上げています)。360度評価制度とか、成果主義人事制度とか。でも、どれも結局はしっくりこなかったんです。
それで、ノーレイティングという人事制度が話題になってきて、「そもそもノーレイティングって何なんだろう」といろいろ調べてたんです。
そんな時に、生きがいラボさんのブログを見て「おもしろい」と思って。それから、福留さんが書いた『人事制度の未来』」を読んだんです。本を読んで感動してしまって、福留さんにお願いしたいと思ったのがきっかけです。

木村さんがご紹介してくれた著書です。
ノーレイティング型人事制度/自己申告型給与制度が必要となる社会的背景や、制度の目的、制度の仕組みや設計方法について書いてあります。

  • 人事制度の未来~ 「給与」と「評価」を分離せよ!
  • 著者:福留幸輔

https://www.amazon.co.jp/dp/4907197438/

福留: ありがとうございます!

木村さん: めっちゃいい本だと思います!いろんな人に勧めてるんですよ!
あの本には、ノーレイティングの根本的な思想や考え方がしっかり書かれていて、それが自分の思っていたこととピッタリで。自分が書いたんじゃないかと勘違いするぐらいで(笑)
人事制度を設計する上では、自律分散型組織にしていきたいという思いがありました。その思いの背景にあるのは、ティールとかホラクラシーが流行っているとかそういう文脈ではなく、前職の会社での体験があったからです。
前職の会社を立ち上げてから成長期までは、自分が本当に信頼できる仲間と仕事ができていて、その時は『(人材の)マネジメント』ということも考える必要がなかったんです。でも、事業が落ち着いてきて人数も増やしていくタイミングになって、科学的なマネジメントも導入していったのですが、うまくいかなかったんですよ。 その時には、マネジャー(管理職)のマネジメントが悪いと思ったんです。適切に部下を管理して、人事評価をして、モチベーションを上げて、部下のパフォーマンスを高める。それができないマネジャーの責任だと思ったんです。
だから、マネジャーの強化にすごく力を入れたんです。マネジメント研修をしたり、外部からマネジャーに入ってもらったり。でも、そういうことをすればするほど、やる気のない社員が出てきたんです。部門ごとの壁が生まれてきて、「それは私の仕事じゃない」とかいう社員が出てきたり。これが「大企業病なのか」と感じました。
ぼくの理想は、マネジメントということがなくても、一人ひとりが自分で考えて行動することで、結果としてチームや組織が最適な状態になることなんです。それは、マネジメントを強化することでは実現できないと感じたんです。
マネジメントを強化するとは、福留さんがおっしゃっているように、外発的動機づけを強化することだと思うんです。ぼくは、そうではなくて、一人ひとりが自分で考えていく自律型の自発的なスタイルに変えていきたいと思ったんです。その方が、絶対に仕事もおもしろいし、組織もうまくいく。まず、自分がそういう会社で働きたいと思いますし。
そういう思いを持っていた時に、福留さんの本を読んで、本当にその通りだと感じたんです。生きがいラボさんの制度にすると、自分が理想とする組織になると思ったんです。

福留: 社員さんが給与を自己申告する「自己申告型給与制度」を導入するには、けっこう勇気が必要だったと思いますが、導入を決断された理由は何ですか?

木村さん: ぼくはずっと前から「セムコ」という会社が好きだったんです。セムコもいろいろな自己申告が取り入れられてますし、ティール組織(フレデリック・ラルー著、英治出版)にも自己申告の要素が紹介されていたので、人事制度の最終的な理想としては、自己申告がいいと思っていたんですよ。ただ、すぐにそれをやるのは無理だなと勝手に思っていました。 でも、福留さんがそれをやる仕組みを体系的につくられていたので、「できるんだ!」と驚いたんです。 自己申告型給与制度の思想や仕組みが分かると、(経営者として)怖いということはありませんでした。むしろ、従来型の人事制度よりも柔軟性も高いし運用もしやすい。そう思います。

福留: 給与を社員さんの自己申告で決めていくという説明をすると、「社員の自己申告で給与を決めたらとんでもないことになる」と感じる経営者さんもおられます。そのへんの不安などはなかったですか?

木村さん: そこは思ったんですけど、自己申告型給与制度のことを深く知っていくと、そうじゃないなと感じました。
ただ単に社員から給与が自己申告されるだけではなくて、会社と社員が「対等なパートナー」として、お互いに「覚悟」を持って対話していくという制度ですから、そこに納得感がすごくありました。 そっち(自己申告)の方が絶対に良いと思いましたし、なんで世の中の人事制度がそうなってないんだろうなって不思議に思いました。
みんなに言ってるんですけど、(自己申告型給与制度を導入する)デメリットがほとんどないんです。
自己申告型給与制度を導入してみて、もし仮に社員からめちゃくちゃな(給与額の)申告が出てきたとしても、それによって話し合いができるわけです。その話し合いで、制度の思想や考え方をしっかりと伝えたら、ほとんどの社員は理解してくれると思っています。ほとんどの社員は、会社に貢献したいと思っていますし、給料も上げたいと思っていますから。
だからこの制度の方が、社員にとってもメリットが大きいんです。そこは信じています。
とことん話し合って、それでもお互いを理解できなければ、その社員と会社は合わないということですね。実際に当社でも、会社の考えと乖離した申告がありましたが、その社員にじっくりと制度の意図を説明したら、今ではびっくりするぐらいしっかり取り組んでくれています。
それには、そこに至るストーリーがありまして。ある社員からかなり高い給与額を申告してきたんですが、
「給与額に見合う貢献になるように提案してください。こちらを説得してくれないとその給与額は承認できません」
と伝えて、それを理解してくれたんです。そして、貢献内容もそれに見合う提案をしてくれたんです。
それでも「ちょっと高いかな」と思ったんですが、その提案をしてくれた社員を「信じて賭けてみよう」と思って、その給与額で承認したんです。 本人も承認されてビックリしたと思います。でも、そのことがこの制度をより深く理解するきっかけになったと思います。
1on1を通してサポートしたんですが、結果的にはその提案はできなかったこともありました。それで次の申告のタイミングになって、その社員みずからが「次の給与額はステイ(現状維持)でお願いします」と言ってきてくれたんです。やっぱり、制度の思想や考え方がちゃんと伝われば変わるんだな、と思いました。

福留: 社員さんを信じて待つという姿勢が伝わったんでしょうね。

木村さん: 1回信じて賭けてみると、本人も分かるんだと思います。今までになかったような、ジャンプアップのような給与額になるわけですから。しかも、「給与を投資」と位置づけていますので、もし提案内容が達成されなくても、半年間はその給与額は支払われるわけです。提案内容が達成されないと、それは投資の失敗になるという話もきちんとしました。 つまり、「あなたを信じて賭けた」ということを、具体的なメッセージとして表したということです。それによって、本人のコミットメントも上がりますし。自分で提案しているわけですから。

福留: 自分で考えて自分で決めた提案が「通った」という体験が大きいんでしょうね。

木村さん: そうですね。人に言われてやらされたことだったら言い訳も出てくるでしょうが、自分で決めたことですから。良いことしかないですよ、今のところはね(笑)

2
導入の効果 ノーレイティング型人事制度/自己申告型給与制度の導入効果

福留: 人件費はどうでしょうか?

木村さん: 人件費はもちろん上がりました。制度導入前から徐々に上げていましたが。人件費は、何が相場かもよく分からないところがありますし。
人件費は上がっていますが、ただ単に上がったという感じではありません。既存の人事制度では、貢献に見合った給与をお支払いできなかった社員の給与を、この制度にすることで引き上げることもできましたので。きちんと成果に結びついて上がっている感じです。この制度を導入してからは、粗利益がどんどん上がっていて、営業利益率が良くなっています。

福留: ということは、労働分配率は下がっているんですね。

木村さん: 下がっています。総人件費も上がってますし、一人当たりの人件費も上がっています。でも、一人当たりの限界利益がそれ以上に上がっていますので。それがどこまでこの制度の影響かは分かりづらいところはありますが、結果としてはそうなっています。

福留: 20代の社員さんが頑張っておられると聞きました。

木村さん: そうですね。当社は新卒を5年前から採用し始めて、今では20代の社員が一番多くなってきたんですが、頑張ってくれていますね。
入社5年目の社員は、入社3年目の時に自己申告型給与制度が導入されたんです。3年目の社員は、ルーキー(若手社員対象の定期昇給制度)に該当するんですけど、自己申告型給与制度で提案をくれて。その頑張りを見ていた後輩たちが、「自分たちも3年目にはルーキーを卒業して自己申告するんだ」と思ってくれたんです。
そういう意味で、積極性や主体性は本当に高まったと思います。20代の社員が、むちゃくちゃ積極的にいろんなことに取り組んでくれていて、「どうしたら会社をもっと良くできるか」を考えてくれています。
その一環で、来年度の採用活動に、新卒で入ってくれた社員がすごく協力してくれています。面接に来てくれた学生さんにおもてなしをしてくれたり、「どうしたらウチのことを覚えてくれるか」を考えていろいろな取り組みをしてくれたり。
内定者にも、今までは懇親会をしていたんですがコロナで出来ないので、Zoom上で半日かけて行うプログラムを企画して、運営までしてくれています。
それも、自己申告する時に書いてくれてるんですよ。「内定者が安心して入社できるような取り組みを自分がリーダーとして実施する」ということを貢献内容に書いてくれて、それを積極的にしてくれていて、本当に感謝しています。

福留: 若手社員がやる気を出してくれないと悩んでいる会社さんも多いなかで、それはすごいですね。

木村さん: 当社では、ベテラン社員が若手社員に引っ張られるようにして頑張っています(笑)
ぼくは、ベテラン社員に「若手社員のサポートに回ってほしい」と伝えています。

福留: 御社の管理職さんは、サポートしていくマネジメントが得意そうですよね。

木村さん: そうですね。若手社員が頑張ってくれるのが嬉しいという感じですね。当社の管理職は、若手社員の活躍を応援してくれるので、それがありがたいですね。

福留: 管理職さんがそのような意識になっているのは何故ですか?

木村さん: 自己申告型給与制度を導入する前から、「ベテラン社員の役割は若手を輝かせることだ」と何度も何度も伝えてきています。それは社内報などでも、全社員に対して繰り返し伝えてきたことなので、それが浸透しているのだと思います。

福留: 自己申告型給与制度を導入して、採用などに変化はありましたか?

木村さん: 当社は求人票を出してないんですよ。今年の新卒採用は、ぼくのTwitterで求人のツイートをしただけです。Twitterから応募があった学生さんへの、最初の会社説明会はぼくが全員やりました。そのときに、自己申告型給与制度のことを説明しました。
新卒採用の社員には、5年間はルーキーというカテゴリで自動昇給の制度があります。先ほど申し上げたように、3年目にはルーキーを卒業するという雰囲気がありますので、採用面接に先輩社員にも入ってもらって、先輩の声ということでそういう内容を伝えています。
中途採用の場合は、入社時は前職の給与をベースにして設定します。そして、次の自己申告の時期に、貢献内容に見合った給与を申告してもらいます。

福留: 自己申告で、給与額を下げてくる社員さんはいらっしゃいますか?

木村さん: 少ないですがいましたよ。ステイ(現状維持)の社員はけっこういますね。それは驚きでした。給与額を下げて申告する社員は、働き方も変えたいというケースが多いですね。時間を短くしたいとか。

3
組織変革のポイント 組織変革を進めていくポイント

福留: 組織変革というテーマで、外部のコンサルタントが関わることに対して拒否反応を示す社員さんはおられませんでしたか?

木村さん: いますよ。でも、10~20%ぐらいじゃないですか。それとは逆に、前向きに捉えてくれる社員も10%ぐらいいます。あとは様子見という感じですかね。
あまりネガティブに反応する人に意識を向けてもうまくいかないと思います。ただ、ネガティブに反応する人は、声が大きいんです。だから、様子見の人たちが引っ張られないようにする必要があると思います。
会社のなかでは、反対意見も大切なんですね。反対意見のなかには、本当に会社のことを考えてくれている意見もありますから。反対意見にしっかりと耳を傾けていくと、感情的になんとなく反対している人に変化が出てくるんですよ。
人事制度に限らず、何か新しいことに取り組もうとすると、必ず反対は出てきます。まったく真剣に取り組まない社員も出てくるんですよ。でも、ぼくはいつも「真剣に取り組まないと良いのか悪いのかも分からないよ」って伝えるんですよ。
イヤイヤでも真剣に取り組んだ後で、もし効果が出なかったら、それはぼくの責任です。でも、真剣に取り組まなくて効果がなかったなら、それは真剣に取り組まなかった人の責任です。それを伝えたら、だいたい理解してくれますね。

4
これからのこと これからの企業経営にとって大切なこと

福留: 人事制度のテーマとは外れますが、これからの企業経営にとって大切なことという、かなり漠然とした質問になりますが、木村さんのお考えをお聞きしたいです。

木村さん: すごく抽象的なテーマですね(笑)大切にするものは企業によって違いますし。ぼくは、あんまりそういうアドバイス的なことは言いたくないので、そういう風に捉えられるとイヤなのですが、自社のことでお答えしますね。
自社でいくと、やっぱり「信頼関係」ですね。これはもう、ずっと思ってますね。会社がいかに社員を信頼できるか。社員が会社をいかに信頼できるか。社員同士が信頼しあっているか。この信頼関係があることによって、必要となる労力が圧倒的に少なくなると思うんです。
信頼できる人と一緒に働く方が、絶対に楽しいし。心理的安全性って、そういうところだと思っているんです。そういうベースをどうやってつくるかを考えています。
信頼ということを考えると、信頼は「見返りを求める」ことからは生まれないと思ってるんです。「会社は社員を信頼しているからその見返りとして頑張ってほしい」とか、そういうことではないと。
まずは、一方的に「ギブ」だと思うんです。裏切られるとか、そういうこともあるかもしれないけど、ともかく信頼し続ける。まずは「ギブ」をし続けないと、信頼は生まれないから、けっこう大変なことだと思っています。
ただ、こちらが信頼していると、結果的にそれに応えてくれます。でも、期待に応えてくれることを見返りに求めているのは、信頼ではないと思うんです。
会社としては、社員一人ひとりがその能力を最大限発揮できて、それが組織の最適化につながるようにすることが必要ですが、仕事や働き方のスタイルが多様化していくと、信頼がなければ、自分以外の人がやっていることに不満が出てくるんです。だから、全社員が同じ時間に出社して同じ時間に帰るというような、画一的なルールが必要だってことになるんです。でもそれは、信頼関係がないということだと思います。信頼があればどんな働き方もできますし、社員を縛るようなルールも必要ないわけです。
今回、全社員に本の購入をサポートする制度をつくりました。書籍1冊のマックスが5,000円で、何回でも購入してよくて、本の内容も一切問わないという制度です。この制度をつくった意図は、社員にもっと成長してほしいし、本を読む習慣をつけてほしいということです。それが、社員の人生にとって良いと思ったからです。
そのことをTwitterで書いたら、いろんな意見をもらいました。「資本金ぐらい本を買うわ」とか「毎月20~30万円の本を買ったら給料がそれだけ増えるということだがそれも認めるのか?」とか。
そのとき思ったのは、ぼくは社員を信頼しているので、そんな社員は出ないということでした。社員はこの制度の意図を理解してくれているし、会社の財務状況もすべてオープンにしているので、制度の意図にそって制度を活用してくれると思いました。そして、実際に問題になるようなことは起こっていません。
社員を信頼せずにルールを決めだすと、どんどんルールが細かくなっていくわけです。でも、そういう細かいルールがないことで、社員にとって使いやすい制度になります。社員を信頼していると、ルール設計が楽なんです。そして、社員にとってもメリットが大きくなるんです。
一方で、ルールを細かくすることを求める社員もいます。細かいルールがないと、社員が自分で判断しなければならないことが増えます。なかには、自分の倫理観を問わ れているようにも感じる社員もいます。でも、そこを自分で考えることが大切なんですね。

福留: 信頼関係が根本にあることが、大切ということですね。長時間、いろいろなお話を聴かせていただきまして、誠にありがとうございました。