従来型の人事制度は働く喜びを奪ってしまう
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いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。
前回は、従来型の人事制度として次の5つの問題をご紹介しました。
① 働く喜びを奪う
② 自律心を阻害する
③ 成長意欲を減退させる
④ 社会貢献に目が向かなくなる
⑤ 複雑すぎて運用が難しい
そして、これらの根拠となる心理学の考え方として、「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」を説明しました。
今回は、外発的動機づけについて説明していきます。
前回の記事
「従来型の人事制度が抱える5つの問題」
外発的動機づけの欠陥
心理学などのさまざまな研究結果を受けて、ダニエル・ピンク氏は『モチベーション3.0』(大前研一訳、講談社、2010年)のなかで、アメとムチ(=外発的動機づけ)の致命的な欠陥を7つにまとめています。
* 内発的動機づけを失わせる
* かえって成果が上がらなくなる
* 創造性を蝕む
* 好ましい言動や意欲を失わせる
* ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
* 依存性がある
* 短絡的思考を助長する
これらの7つの欠陥を踏まえながら、前述した従来型の人事制度が抱える問題を説明していきます。
働く喜びが奪われる
従来型の人事制度のコンセプトを一言でいうと、「金銭的報酬でモチベーションを高めよう」ということです。
そのために、いかにして社員さんにとって納得性の高い「点数」をつけるかを追求してきました。
しかし、このことで、仕事そのものの充実感や達成感よりも、金銭的報酬に目が向くようになってしまいました。
本来、仕事とは「仕事の報酬は仕事」という言葉にあるように、それ自体が喜びや達成感、充実感の源泉になり得る行為です。
お客様に喜んでもらえたときの充実感や、高い目標を達成したときの達成感は、金銭に代えがたい喜びにつながります。
しかし、金銭的報酬によって社員さんをコントロールしようとする従来型人事制度によって、よりたくさんの金銭的報酬(給料)を得ることばかりに意識が向き、それが仕事の目的となってしまいました。
働くことで得られる喜びを奪い、仕事を「苦役」に変えてしまったのです。
それでも、金銭的報酬によってモチベーション(外発的動機づけではあるが)を維持できていた頃、つまりはバブルが崩壊するまでは、問題が顕在化しませんでした。
なぜなら、給料が上がり続けていたからです。
アメとムチの欠陥のなかに、「依存性がある」ことが挙げられています。
アルコール依存症や薬物依存症のように、外発的動機づけには「より強い刺激が与えられないと満足できない」という傾向があります。
「叱る」という外発的動機づけによって社員さんをコントロールしようとすると、最初は軽く叱れば動いた社員さんでも、時とともに、より強く叱らなければ動かなくなっていきます。
給料という「金銭的報酬」によってやる気を高めようとすると、給料を上げ続けなければなりません。
しかも、同じ額を上げるだけでは、モチベーションを維持することも困難になります。
現在の日本は、金銭的報酬で動機づけし続けることなど、難しい環境になっています。
昔のような高い経済成長を背景に、給与を上げ続けることは非常に困難です。
言い方を換えれば、昔は金銭的報酬の弊害を給与を上げ続けることによってごまかせたのです。
現在のような金銭的報酬では「ごまかせない」社会に、日本は置かれています。
これだけ経営環境が変わっているのに、人事制度の世界では昔の高度経済成長時代と同じパラダイムが続いています。
私が、人事制度の構造をゼロから見直さなければならないと主張しているのは、こういう背景があるのです。
この記事の続き
「従来型の人事制度は受け身の姿勢を助長する」
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