外発的動機づけをなくすことが「ノーレイティング」のコンセプト
- カテゴリ:ノーレイティング(No Rating)
今回のテーマは、「外発的動機づけの弊害」についてです。
脳科学や心理学の研究によって、
ご褒美や罰などの外部からの刺激(=外発的動機づけ)には、
さまざまな弊害があることが分かってきました。
外発的動機づけは仕事の楽しさを奪う
ダニエル・ピンク氏は『モチベーション3.0(講談社)』のなかで、
脳科学や心理学で明らかになった外発的動機づけの弊害について
次のようにまとめています。
1. 内発的動機づけを失わせる
2. かえって成果が上がらなくなる
3. 創造性を蝕む
4. 好ましい言動や意欲を失わせる
5. ごまかしや近道、倫理に反する行為を助長する
6. 依存性がある
7. 短絡的思考を助長する
目標達成したときのインセンティブなどのご褒美や、
人事評価の点が低かったときの減給などの罰、
つまり、外発的動機づけによって、
やりたくない仕事をイヤイヤするような場面を想像してください。
創意工夫をしてよい仕事をしようという意欲も湧きませんから、
よい結果をつくることはできないでしょう。
もちろん、仕事が楽しいはずもありません。
口をついて出てくる言葉は、後ろ向きの言葉になるでしょう。
また、少しでも楽をして仕事を終えたくなるので、
ちょっとしたズルやごまかしをしてしまうかもしれません。
最初はイヤイヤながらも仕事をする動機になったご褒美や罰も、
そのうち感覚がマヒしてきて、
より強いご褒美や罰がなければ仕事をする動機にもならなくなります。
そして、その場さえ良ければよいという毎日を繰り返すことになります。
少し誇張した表現を使いましたが、イヤイヤ仕事をした経験のある人でしたら、
思い当たることがあるのではないでしょうか?
外発的動機づけは、仕事の充実感・達成感・楽しさを奪ってしまうのです。
外発的動機づけを取り除くことが「ノーレイティング」のねらい
従来型人事制度は、「レイティング」という外発的動機づけによって、
社員さんに組織側が望む行動をとらせようとする仕組みです。
組織側に「社員をコントロールしよう」という意図がなくても、
従来型人事制度はそういう構造を持っていますから、
社員さんには「組織からの強制」として映ります。
「ノーレイティング」とは、
従来型人事制度から強制力(=外発的動機づけ)を取り除いた仕組みです。
ただし、人事制度という存在が、本質的には外発的動機づけですから、
完全に取り除くことはできません。
しかし、「レイティング」という外発的動機づけを捨てることは、
「我々は社員をコントロールしようとしない!」という宣言になります。
「ノーレイティング」は、社員さんを独立した個人として尊重するという
組織側の覚悟を表すことになると思っています。
そして私は、これからの日本にとって、
ノーレイティングがますます必要になると思っているのですが、
それは次回にお伝えしたいと思います。