「社員」が給与を提示する制度
- カテゴリ:自己申告型給与制度
前回は、「給与は投資である」というコンセプトに込められた
1.給与は、「未来の貢献」に応じて支払われる
2.給与は、「主観」に基づいて支払われる
3.給与は、「社員側」から提示される
という3つのメッセージのなかの、2つ目について扱いました。
今回は、3つ目の「給与は社員側から提示される」について解説したいと思います。
※前回のブログはコチラ「「主観」によって給与を決める」
給与の定義を変革したときには、
社員さまにとっては、3つ目の「給与は社員側から提示される」という部分が、もっともインパクトがあるのかもしれません。
一般的には、給与額を決めるのは会社側という認識であり、
ある給与額を得るための方法(=評価基準)まで提示するのも会社側の責任だ、という認識が定着しています。
給与に関する意見のなかで、
「どうやったら給料が増えるのか、会社・上司が示すべきだ」
「どうやったら評価が上がるのか、会社・上司が示すべきだ」
という声が根強くあるのは、給与を決めるのは会社側という認識が強いことの現れです。
しかし、この認識は、社会の原則から逸脱しています。
投資を得ようとする事業家が、
「何をしたら投資してもらえるんですか?」
「適切な投資額はいくらですか?その根拠も示してください」
と、投資家に対して言うでしょうか?
仮にそれを言った瞬間、投資を得られないことが決定します。
なぜなら、自分で考えていないということが露呈するからです。そんな事業家に投資する人はいません。
会社に対してどんな「貢献」をするのか、そしてそれがどれほどの「価値」があることなのかを示すのは、社会の原則からすると社員側の仕事なのです。
私のこの考えは、一般的な認識とはまったく逆の発想なので、すぐには受け入れられないかもしれません。
しかし、人生を自分の意思決定で切り拓いていこうとするとき、「自分を使って社会に対してどのような貢献をするのか?」を自分で決めることは、避けては通れない道です。
それを自分で決断するからこそ、真の「生きがい」が生まれます。
逆に、自分が何をするのかの決断を自分でしなければ、いつも現状に満足できず、やらされ感ばかりが高まります。
仕事が楽しくなくなるのです。
豊かな職業人生のためにも、「給与を自分から提示する」という自律した意識が求められるのです。
「給与を社員側が提示する」という給与制度にした場合、個別給与額が制度によって自動的に決まることがなくなります。
会社と社員の「対話」が必要になります。
お互いのことを尊重し、ともにより良い方向に向かっていくために対話を繰り返すことでしか、本当の信頼関係は築けません。
評価で点数をつけ、その点数で自動的に給与額を計算するという従来の給与制度では、信頼関係は築けないのです。
給与の定義を「給与は社員側から提示される」と変えることは、会社(経営者・上司)と社員さまが、本当のパートナーとしての信頼関係を築くために必要なことなのです。
今回は「給与は社員側から提示される」を解説しました。
次回は、この3つの定義にもとづいて給与制度を構築するために、必要となる「経営側の意識変革」について解説したいと思います。