こんにちは。生きがいラボの福留です。
2026年3月期からの有価証券報告書において開示義務のある内容が拡充され、経営戦略と連動した給与決定方針の開示が義務化されることになりました。これまでは人的資本経営という大きな枠組みのなかで語られることが多かったテーマが、給与という具体的な言葉で問われる段階に入ってきたのだと感じています。
この記事では、この開示義務化の拡充をきっかけに、給与決定方針を社外に向けて示すことが求められていく社会環境(現在は上場企業だけですが)のなかで、社内で社員さんと給与額について語り合うことがどのような意味を持つのかについて、私なりの考えをお伝えしたいと思います。給与を自己申告する人事制度に10年以上取り組んできた立場から、あわせて自己申告型給与制度の視点もご紹介します。
「開示する」というだけで終わらせたくない
給与決定方針の開示というと、投資家さん向けの資料づくりや、有価証券報告書の記載事項をどう整えるかという、社外向けの情報公開の作業として受け止められることが多いのではないでしょうか。
たしかに、開示のための文章を整える作業自体は必要です。それ自体が悪いわけではありません。
ただ、私は、それだけで終わらせてしまうのはもったいないと感じています。給与決定方針を言葉にする作業そのものが、会社が何を大切にして給与を決めているのかを、あらためて見つめ直す機会になるはずだからです。
結果の公平より、プロセスの公平を
給与決定に関する公平性には、「配分的公平」と「手続き的公平」の2種類があります。給与額という結果で公平性を示すことは、配分的公平を追求する取り組みであり、給与が決まるプロセスを公開し、より民主的な手続きをとることは手続き的公平だといえます。
私は、結果としての金額の公平さを追求することは、給与への納得感を高めるうえでは限界があると考えています。なぜなら、給与額に対する納得感は、当事者の主観によって発生するものだからです。そういう理由から、給与額を決定するうえでは、配分的公平性を過度に追求するよりも(一定の配分的公平性は必要だと思います)、決めるまでのプロセスの公平性を追求する方が建設的なのではないかと考えています。
これまでの人事制度の多くは、会社が方針を定め、会社が評価し、会社が金額を決めるという流れでした。社員さんは、その結果を受け取るだけの立場に置かれがちだったように思います。
私が自己申告型給与制度という、給与を自己申告する人事制度に取り組んできたのは、この流れを変えたかったからです。どんな貢献をするか、それがどれぐらいの給与に見合うか、どんな働き方をしたいか。この三点を社員さんご本人に申告していただくところから、給与決定のプロセスが始まります。方針を示すだけでなく、方針を決める場に社員さんご本人も加わっていただく。そんな給与決定プロセスの民主化こそが、給与の額以上に大切なのではないかと感じています。
給与決定方針を示すだけでなく語り合う場に
私が大切にしているのは、対話です。制度や仕組みは、あくまで対話が起こるための土台であり、主役ではありません。
給与決定方針も、一度文章にして示したら終わり、というものではないと思っています。むしろ、その方針をもとに、経営者さんと社員さんが、なぜその方針なのか、これからどう変えていきたいかを、繰り返し語り合っていくことにこそ意味があるはずです。

開示義務化をきっかけに方針を書き出す会社さんが増えるのであれば、それを社外向けの一度きりの発表で終わらせず、社内での対話の入り口として使っていただけたらと願っています。
行き過ぎた性急さへの戒め
ここまで書くと、給与に関するすべてをオープンにして、すぐにでも対話の場を増やせばよいのだと受け取られるかもしれません。ですが、それは私の意図とは違います。
情報を開き、対話の場を増やすことと、準備のないまま一気に進めることは、まったく別のことです。
会社の状況や、社員さんお一人おひとりの状態に合わせて、開示の範囲や対話の頻度を調整していく思いやりは、透明化を進めるうえでも欠かせないと感じています。
おわりに
給与決定方針の開示義務化は、社外向けの情報公開の話として語られることが多いテーマです。ですが私は、これを、会社が何を大切にして給与を決めているのかを、社員さんとあらためて語り合うきっかけとして生かしていくことが、生きがいあふれる組織づくりには必要だと考えています。
方針を示すことと、方針について語り合うこと。このふたつをワンセットで大切にする会社さんが増えていけば嬉しく思います。私自身も、そんな願いとともに、自己申告型給与制度に取り組み続けたいと思っています。
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