給与を自己申告にするデメリット
- カテゴリ:自己申告型給与制度
人事制度/人事評価の「手続き的公平」を高めるという問題意識のなかで、社員さんが自分の給与を申告する自己申告型給与制度という発想が生まれたことは、前回にお伝えしました。
※前回の記事「従来の人事制度は民主的ではない」
人事制度、特に給与制度について手続き的公平を高めたり、自律分散の方向性にしていくのであれば、「給与も自己申告」というのは自然な流れかと思っています。
人事評価による点数づけやランクづけを廃止して、給与は自己申告をもとに対話で決めるというお話をすると、さまざまなご質問をいただきます。
多いところでは、
1.社員さんが自分の給与を決められないのではないか?
2.とんでもない給与額の申告が出てくるのではないか?
3.人件費がとんでもなく増えるのではないか?
4.管理職さんの精神的な負担が大きくなるのではないか?
5.社員さんがお金のことばかり考えるようになるのではないか?
といったご質問をいただきます。
これらのご質問は、「給与を自己申告で決める」というコンセプトを聞いたときに、直感的に浮かび上がるデメリットだと思いますので、これから何回かにわけて、私の経験を踏まえて回答していきたいと思います。
まずは1番目の「社員さんが自分の給与を決められないのではないか?」というご質問に回答していきたいと思います。
「決められない」ではなく「決めたくない」
人事制度、特に給与制度を変更したときには、少なからず社員さんの感情は揺れ動くものです。
しかも、「自分で給与額を申告する」という制度に変わるとなれば、一般的な人事制度とはあまりにも違いますから、社員さんは戸惑われると思います。
戸惑う社員さんは多いですが、では自己申告できない社員さんが多いかというと、そうではありません。
今までご導入いただいた企業さまでも、何かしらのカタチですべての社員さんが自己申告を行ってくださいました。
ここで、1番目のご質問に回答すると、
「決めるのに苦労する社員さんはいらっしゃるが、それは能力面ではなく、心理面が影響していることが多い」
というのが、私のこれまでの経験からくる回答です。
もっと直接的にいうと、「決められない」ではなく「決めたくない」ということです。
なぜ「決めたくない」という心理になるかというと、「自分で決めたら責任が生じる」からです。
ちょっとイジワルな言い方をすると、自分で決めなければ他人(上司や会社)のせいにできますが、自分で決めれば他人のせいにできないのです。
これまでの人事制度は、この「自分で決めたくない」という心理を満たすために、
「何をすればいいのか?」
「何をすれば評価されるのか?」
「何をすれば給料はどうなるのか?」
をできるだけ具体的に、できるだけ確定した情報として、提示する努力をしてきました。
自分が何をするかを考えるのはとても難しいことですし、自分で決めるのは勇気が必要になりますので、「何をすればいいのか」を会社や上司が示してくれれば楽といえば楽です。
しかし皮肉なことに、やることを明確に示されれば示されるほど、人の「やらされ感」は高まっていきます。
人は「自分で決めたい」という欲求も持っているからです。
「自分で決めたくない」という心理を角度を変えて見ると、人は「自分で決めたことは責任を持ちたい」ということです。
「自分で決めたい」という欲求が人間の本質であり、
「自分で決めたくない」という欲求は、失敗して笑われたり傷ついた経験によって後天的に身に着けた、一種のクセだと思っています。
給与の自己申告を通して自分の人生を考える
自分の給与を自己申告するということは、とても難しいテーマだと思います。
しかし、難しいテーマに直面したときほど、深く考えるきっかけになります。
当社のノーレイティング型人事制度/自己申告型給与制度では、給与だけではなく、自分がやりたい業務や働き方も申告してもらいます。
給与や業務、働き方の自己申告を通して、自分の人生を深く考えるきっかけになります。
「自分の人生を深く考える」という時間を持つことが、とても大切だと考えています。
給与を自己申告するというのは、たしかに難しいことかもしれませんが、その難しいテーマを人任せにするのではなく、自分で考えるということ自体に価値があります。
しかし、自分一人ではなかなか考えきれない社員さんもいらっしゃるので、そこは周りの人がサポートしていく必要はあるかと思います。
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