とんでもない給与額の申告にどう対応するか?
- カテゴリ:自己申告型給与制度
人事制度では、人事評価の点数やランクに応じて、処遇(昇給額や賞与額)が決まります。
当社が設計・運用のお手伝いをしている「ノーレイティング型人事制度」「自己申告型給与制度」では、社員さん一人ひとりが自分の給与額などを申告します。
自己申告型給与制度に対して、よくいただくご質問では、
1.社員さんが自分の給与を決められないのではないか?
2.とんでもない給与額の申告が出てくるのではないか?
3.人件費がとんでもなく増えるのではないか?
4.管理職さんの精神的な負担が大きくなるのではないか?
5.社員さんがお金のことばかり考えるようになるのではないか?
というご質問をいただくことが多く、前回は1番目について回答させていただきました。
※前回の記事「給与や働き方を自分で考えることに意味がある」
今回は、2番目のご質問に回答していきたいと思います。
とんでもない自己申告は必ず出てくる
社員さんが自分の給与を申告するというお話をすると、
「とんでもない申告が出てくるんじゃないですか?」
というご質問をいただくことがあります。
たとえば、現在の給与額の2倍の申告が出てくるとか、そういうイメージだと思いますが、
正直に申し上げると、そういう申告は出てきます。
当社のお客さまは、50名~100名の会社さんが多いのですが、どの会社さんでも2~3名は上記のような現状とかけ離れた申告があります。
多くの管理職さんは、そういう申告が出てきたときに、
「困ったことを言う部下だなぁ」
「どうやって説得しようかな」
という心境になりますが、実はこのような申告にどう対応するかが、会社と社員さんがパートナーになれるかどうかの分かれ目です。
「不満」というレッテルを貼らない
改めて確認ですが、ノーレイティング型人事制度/自己申告型給与制度という取り組みをしているのは、
会社と社員さんが真のパートナー関係になるためです。
会社と社員さんがパートナーだと考えたならば、給与という社員さんにとって重要なテーマで、社員さんが意見を言える場がないのは公平ではないという問題意識によって、「給与を自己申告する」という人事制度/給与制度が始まりました。
会社と社員さんがパートナーだと考えるならば、社員さんからどんな申告があったとしても、それを「不平不満」や「問題発言」のようなネガティブな捉え方をすべきではありません。
そういう申告があったことを、お互いのことを分かり合える「チャンス」だと捉えることで、本当のパートナーになっていきます。
そういう申告があったときこそ、しっかりと対話をすることで、社員さんがそのような申告をする理由を理解すべきです。
もしも、ビックリするような申告があったとしても、私の経験上、それは人事制度が変わったことで新たに生まれたモノではありません。
もともと持っていた感情が、表に出てきただけです。
「自分は正当に評価されていない」
「自分がやっている業務の大変さを分かってもらえていない」
というような感情がこれまでに積み重なってきていて、給与を自己申告するという機会ができたことで、その感情を表に出すことができたのです。
その感情に「不平不満」というレッテルを貼らずに、社員さんの本音に共感しつつ対話することで、パートナーになっていくことができます。
対話が圧倒的に足りていない
会社と社員さんは、進みたい方向性が一致したときにパートナーになれます。
方向性が一致しないのに、無理やり一緒に進んでいこうとしても、片方あるいは両方の意思をないがしろにしてしまうだけです。
それなら関係を解消した方がお互いのためです。
しかし、ここで大切なことは、
「お互いの本音を語り合う対話の時間が圧倒的に足りていない」
ということです。
お互いに本音レベルで対話することなしに、関係を解消したり、お互いに不満を抱えながら進んでいくのは、双方にとってデメリットしかありません。
ほとんどの会社では今まで、会社と社員さんは、給与について本音で話していません。
本音で話すことなく、お互いに納得できる給与額を自動的に弾き出してくれる魔法の装置として人事制度/給与制度に期待をしてきましたが、そんな便利なものなど存在するわけがありません。
従来の人事制度のコンセプトでいくら工夫したとしても、パートナーにはなれません。
本音で対話することはエネルギーを必要としますが、本当にパートナーになるには対話しかありません。
2番目のご質問への回答ですが、「とんでもない申告」に思えるような自己申告があったとしたら、それは社員さんが本音を伝えてきてくれたということで、
そのような申告は歓迎すべきものだと、私は考えています。
そこから本音の対話がスタートし、本当にパートナーと言える関係が始まるのだと思います。
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