人事制度が対話の逃げ道になってはならない
- カテゴリ:自己申告型給与制度
自己申告型給与制度という、社員さんが給与を自己申告する人事制度に対して、
1.社員さんが自分の給与を決められないのではないか?
2.とんでもない給与額の申告が出てくるのではないか?
3.人件費がとんでもなく増えるのではないか?
4.管理職さんの精神的な負担が大きくなるのではないか?
5.社員さんがお金のことばかり考えるようになるのではないか?
というご質問をいただくことが多く、前回は4番目について回答させていただきました。
※前回の記事「人事制度が管理職にムリをさせている人件費の常識を変える」
今回は、5番目のご質問に回答していきたいと思います。
何があろうと発言する機会を奪ってはならない
人事制度に関連して、給与や労働時間などの条件について社員さんが意見を言うことを、好ましく思わない経営者さんや管理職さんは意外と多いです。
たしかに、過度な権利主張に対応するのはストレスがかかることですので、このお気持ちも分かります。
しかし、社員さんとパートナー関係を築いていきたければ、社員さんの意見に誠実に向き合っていくことが大切です。
人事制度を使って社員さんの考えをコントロールしたり、発言の機会を奪うような組織運営をするならば、社員さんとパートナーになることは不可能です。
このことは、情報共有においても同じことが言えます。
経営情報を意図的に隠したり、都合の良いように情報を捻じ曲げたりするようなことは、相手をコントロールしようという意図から生まれます。
たしかに、情報の透明性を高めれば、社員さんが情報を誤解してしまう可能性も増えますので、説明する労力や時間が増えるのは間違いありません。
しかし、その労力や時間を惜しんでいては、社員さんとはパートナーになれないのです。
もし、経営陣の意思決定ミスが明らかになるような情報だとしても、変に隠すようなことをせず、ミスを認めて素直に謝るという姿勢が大切だと思います。
仕事に生きがいを感じないからお金が気になる
真のパートナー関係というのは、信頼と感謝でつながっている関係だと思います。
金銭的な利益があるからイヤイヤながら関係が継続しているというのは、パートナーとは呼べないと思います。
会社を辞めると収入がなくなるから、仕方なく仕事をしているという状態ならば、それはご本人にとっても、会社にとっても、望ましいとは言えません。
イヤイヤ仕事をしていても楽しくはないでしょうし、創意工夫したり新たなことにチャレンジしようという意欲も生まれませんから、成長もできません。
また、仕事が苦痛であれば、給与は苦痛に耐えるための鎮痛剤と化しますので、そのような社員さんは自分の貢献度とは関係なく、給与の増額を要求してくることになります。
給与に対して、会社と社員さんの考えが平行線をたどる原因は、ここにあります。
会社は仕事の貢献度に応じて給与を決めたいと考えますが、社員さんは自分が感じる苦痛に応じて給与を求めますから、話がかみ合うはずがないのです。
仕事が楽しくなければ、鎮痛剤としての給与のことばかりが気になってしまうのです。
聖域をつくらず対話することが大切
給与のことばかり気にする社員さんが悪い、と書いたように思われるかもしれませんが、私はそれを問題だとは思っていません。
人間ですから、いろいろな感情を持つのは当然ですし、楽しく仕事をしている人でもお金のことは気になるはずです。
問題なのは、給与について本音で対話しないことです。
お金の話は、なかなか率直な対話をしづらいテーマだと思いますので、人事制度/給与制度にお互い納得のいく給与額を弾き出してほしいというお気持ちも分かります。
しかし、これまでお伝えしてきた通り、対話を避けていては本当に信頼し尊重しあうパートナーになれません。
給与については、触れられない聖域になっている組織もありますが、聖域をつくらずに対話することが必要だと思います。
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