ティール組織での人事評価はどう変わるのか?
- カテゴリ:ティール組織(自律分散型組織)
ティール組織のような自律分散型の組織運営をしている(あるいは目指している)経営者さんの多くは、人事評価に課題を感じているのではないでしょうか?
一般的な人事評価制度は、フレデリック・ラルー氏の「ティール組織(英治出版)」でいうところの「オレンジ組織」を前提においていますので、違和感をお持ちになるのは当然かと思います。
この記事では、ティール組織では、一般的なピラミッド型組織と比べて人事評価がどのように変わるのかを解説します。従来の人事評価に違和感を持っている方々のお役に立てればと思います。
ティール組織における人事評価の概念
ティール組織のような社員さんの主体性を基礎に置く組織運営への移行を検討する中で、人事評価制度の見直しは避けて通れない大きな課題です。
従来型のトップダウン組織とは異なり、ティール組織ではさまざまな事柄を社員さんが自分の意思で決定できることが大切な要素となります。
これは、組織運営における価値観そのものが大きく違うということであり、当然ながら、人事評価の「あり方」自体も大きく異なることになります。
では、ティール組織において、人事評価は一体どう変わるのでしょうか?
従来型組織との違いを理解することが、効果的な人事評価制度の設計に必要となりますので、まずは従来型の人事評価の問題点について確認したいと思います。
従来型の人事評価の問題点
従来型の人事評価制度は、多くの場合、上司による一方的な評価が中心であり、成果主義や実力主義に基づいた評価指標が用いられることが多くなります。
ここで、従来の人事評価制度の問題点について、いくつか指摘したいと思います。
大きな問題点としては、評価項目や評価基準が過剰に複雑であったり、あるいはその反対に曖昧であったり、評価者の主観が強く反映されたりすることで、社員さんのモチベーション低下や、公平性の欠如につながったりする可能性があることです。
また、短期的な成果ばかりに目が行きがちになり、長期的な視点での成長や組織への貢献が見過ごされるケースも少なくありません。
さらに、競争的な環境を生み出し、チームワークを阻害する可能性も懸念されます。
加えて、私はそもそも一人ひとりの貢献に点数をつけること自体が不可能だと考えていますので、どれだけ人事評価制度を作り込んだとしても、人事評価制度が期待される機能を果たすことはないと考えています。
多くの会社さんが、人事評価制度に課題を持っていることが、その証拠ではないでしょうか?
ティール組織の人事評価の特徴:自律性と目的志向
ここから、ティール組織における人事評価制度について述べていきますが、私の考えを述べる前に、生成AIに「ティール組織における人事評価」というテーマで書いてもらった記事を挙げます。一般的な情報として参考になると思います。
―――生成AIが書いた「ティール組織における人事評価」引用―――
ティール組織における人事評価は、従業員の自律性と組織全体の目的への貢献を重視した、より柔軟で包括的なアプローチを取ることが求められます。
評価の焦点は、個々の成果だけでなく、個人の成長、チームへの貢献、組織全体の目標達成への貢献へとシフトします。
従業員は、自身の成長目標を設定し、その達成に向けて自律的に行動し、その過程と結果を評価の対象とすることで、主体的な働き方を促進します。
従来型の成果主義的な評価指標から脱却し、ティール組織では、より多角的な評価指標の導入が重要になります。
単なる数値目標の達成だけでなく、従業員の成長、チームワークへの貢献、組織文化への積極的な参加といった、定量化が難しい要素も評価に含めることが必要です。
この転換によって、従業員の自律性とモチベーションを向上させ、組織全体の成長を促進することができます。
<具体的な評価指標の例>
①チームへの貢献度チーム目標達成への貢献度、他者へのサポート、協調性、コミュニケーション能力など。
②スキル開発への取り組み:新しいスキル習得への意欲、学習への積極性、自己学習時間、研修への参加など。
③プロフェッショナルとしての成長:専門知識・スキルの向上、問題解決能力、リーダーシップ、責任感など。
これらの指標は、定性的な評価と定量的な評価を組み合わせることで、より正確で公平な評価を実現できます。
―――生成AIが書いた「ティール組織における人事評価」引用おわり―――
ティール組織における人事評価については、私の考えは上記の内容に加えて、「自分で決める」範囲をどこまで拡大するのかということが、大きな要素だと考えています。
ティール組織での人事制度の設計思想
ティール組織とは、フレデリック・ラルー氏が提唱した概念で、従来の管理職中心のピラミッド型組織に対して、社員さんが主体的に問題を解決し、組織に貢献します。
このようなティール組織では、以下の3つの要素が基本的な特徴として挙げられます。
◆自主経営(セルフマネジメント):各チームや個人が自主的に管理を行い、誰かからの統制を受けることなく意思決定できる。
◆全体性(ホールネス):社員さんが職場で自分を偽る仮面を着ける必要がなく、本来の自分を表現できる。
◆進化する目的(エボリューショナリー・パーパス):組織は固定的な目的を持つのではなく、常に変化し続ける環境に合わせて進化する。
このように、従来型のピラミッド組織とティール組織とでは、組織運営の価値観が大きく異なりますので、当然ながら人事制度も大きく異なっていきます。
ただ、ティール組織(自律分散型組織)における人事制度は、それぞれの組織が独自に試行錯誤しているような段階ですが、ティール組織(自律分散型組織)の世界観・組織観から導き出される大きな方向性はお伝えできると思います。
ここからは、私が考えるティール組織(自律分散型組織)での人事制度の方向性についてお伝えしたいと思います。
(1)人事処遇の自己決定
ティール組織では、給与や働き方、配置などの人事処遇は、当然ながら社員さん本人が決めることになります。
ただ私の考えでは、人事処遇とくに「給与」について社員さんが自己決定するためには、いろいろ整えていかなければならない前提があると考えています。
その前提とは、「給与情報が全公開されている」「助言プロセスが機能している」「紛争解決プロセスが機能している」の3つです。
この3つの前提を段階的に整えていく取り組みが当社の「自己申告型給与制度」なのですが、なぜ段階的に整えていくかというと、今まで従来型の人事制度を運用していた組織にとっては、この3つの前提はけっこう高いハードルだと認識しているからです。
この3つの前提については、詳しく解説するとかなり長くなってしまいますので、また別の記事で解説しようと思います。
(2)役割を固定化する仕組みの廃止
従来型の人事制度では、等級制度の存在によって、上下関係が生まれたり、給与が年功的になったり、キャリアが画一的になったりします。
実際には等級制度だけが原因ではないのですが、等級制度が強化しているように感じています。
ティール組織では、役割の違いはあれども上下関係はなく、その役割も流動的になりますので、等級制度のような役割を固定化する仕組みは相容れません。
(3)自然調整を促す仕組みの導入
ティール組織では、特定の権限を持っている人が調整機能を担うのではなく、メンバー相互の調整によって、あるべき状態に自然に近づいていくことになります。
それが先ほど少しだけ紹介した「助言プロセス」や「紛争解決プロセス」と呼ばれるものですが、そういう自然調整を促す仕組みを導入することが必要です。
ティール組織における人事制度の課題
もちろん、ティール組織における人事制度には課題もあります。
自己申告型給与制度に取り組んできた経験から、社員さんが自分の給与額を決めることには、不安を覚える社員さんもいらっしゃいます。
また、上で述べたように、ティール組織では固定的な等級制度や人事評価制度が廃止されたり、廃止されなくても運用方法がかなり変わりますので、見方によっては制度としてあいまいだと解釈される部分も出てきます。
これらの課題を解決するためには、組織全体で「対話」と「フィードバック」の文化を醸成することが大切です。
社員さん同士が率直なコミュニケーションができ、他者の意見を真摯に受け止め、かつ自分で意思決定するような文化が必要になります。
まとめ:ティール組織と人事制度の未来
ティール組織や自律分散型組織は、これからの企業にとって非常に魅力的な組織モデルです。
しかし、この組織モデルは単にカタチだけの話ではなく、その根底にある価値観が重要な要素になりますので、人事制度の大きな変革が不可欠です。
私たちが目指すべきは、社員さん一人ひとりが自律的に意思決定し、組織全体として進化し続けることのできる環境です。
そのためには、従来の固定的な価値観を打破し、社員さんと経営者さんが共に歩むパートナーシップの形成が欠かせません。
ティール組織(自律分散型組織)の考え方は、新たな未来を切り拓く機会になると信じています。
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