どんな人間観で人事制度を設計するのか?
- カテゴリ:ノーレイティング(No Rating)
前々回から、下記の人事制度を設計するときの基本的な方向性をご紹介し、
前回は2つ目である「手続き的公平」について解説しました。
1.上位概念から発想する
2.配分的公平ではなく手続き的公平を目指す
3.レアケースまで仕組みにしない
今回は、3つ目の「レアケースまで仕組みにしない」を解説します。
※前回のブログはコチラ「人事制度の設計では「手続き的公平」を追求しよう」
※前々回のブログはコチラ「人事制度設計で忘れてはならない3つのこと」
■どんなルールでも例外や抜け道はできる
人事制度を設計しているときに、
経営者さんや人事担当者さんが無意識のうちに持っているのが、
「すべての場面を想定して制度を設計すべき」
という考え方です。
たしかに、就業規則の服務規律や懲戒などは、
刑法の罪刑法定主義の考え方で設計されることが多いので、
細かいところまで規程にしておくことが一般的です。
しかし、どれだけ細かい規程をつくったとしても、
必ず当てはまらない場面は起こりますし、
あらゆるケースに当てはまるルールをつくろうとすると、
膨大なボリュームになってしまい、逆に運用が困難になってしまいます。
■努力する人に焦点を当てて設計する
私が設計のお手伝いをさせていただく
No Rating(ノーレイティング)型人事制度の根本思想は、
「人間は、自分のことは自分で決めたい(=自律)」
「人間は、成長する意欲を持っている(=成長)」
「人間は、人の役に立ちたいと思っている(=貢献)」
という人間観に基づいて設計されていますので、
すべては社員さんの自己申告からスタートします。
しかし、「自分で決めたくない」という人もいらっしゃいますし、
なかには「嘘をついてでも高い処遇を得たい」と思う人も
いるかもしれません。
人間というのは、
性善説や性悪説できれいに切り分けられるものではなく、
内面に清と濁を併せ持っているものです。
どんな人でも、自分のなかにある弱い部分に負けてしまい、
心ならずも自分勝手なことをしてしまうこともあるでしょう。
ここで大切なのは、「誰」に焦点を当てて制度を設計するかです。
私の経験上、No Rating(ノーレイティング)型人事制度の意図を
丁寧に説明すれば、
多くの社員さんは「自律」「成長」「貢献」の大切さを理解して、
その方向に努力してくださいます。
「制度を悪用して自分だけ得をしよう」というような人は、
ごくごく稀です。
いるかいないか分からない、
いたとしてもごく少数の自分勝手な行動に焦点を当てて設計するか、
大多数の努力したい社員さんを対象に制度を設計するか、
どちらが社員さんのためになるかは明白でしょう。
自律したい人・成長したい人・貢献したい人が、
どんどん活躍できる人事制度にすることに意識を集中することが、
大切だと思います。