いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。
3月決算の会社さんでは、10月は上期をふり返る人事評価の時期にあたることが多いと思います。
人事評価の点数づけについては、以前、過去と未来という時間の視点から書きました。今日は、社員さん・管理職さん・経営者さんという三つの立場から見つめてみたいと思います。
先にまとめると、人事評価の悩みは三つの立場のそれぞれにあり、誰かの力量や意識の問題ではないと私は考えています。悩みは、人が人に点数をつけ、点数で給与が決まるという構造から生まれています。
構造そのものを変える取り組みのひとつが、給与を自己申告する人事制度です。
目次
社員さんは自分の知らないところで決まった評価を受け取っている
社員さんの立場でよくあるのは、自分への人事評価に納得がいかないという不満です。評価項目が自分の貢献を拾えていない。どうすれば評価が上がるのか分からないので、基準をもっと明確にしてほしい、など。
人事評価の点数は上司がつけ、点数は給与や賞与につながります。社員さんから見ると、生活に直結する数字が、自分の手の届かないところで決まっていくことになります。
自分の知らないところで決まった評価に対しては、多くの人は不満を持ってしまうものです。従来型の人事制度のなかで給与に自分の意思を乗せようとすると、転職するしか道がなくなってしまいます。
評価を受け取る立場に長くいると、自分は何に貢献したいのか(Will)よりも、上司が何をすべきかを示してほしい(Must)という意識が強くなっていきます。受け身の姿勢は、社員さんの性格ではなく、評価を受け取る立場から生まれるのだと考えています。
管理職さんは客観的で公平な点数を求められている
管理職さんからは、人事評価の時期が憂鬱だというお声をたくさんいただきます。客観的で公平な点数をつけるのが難しい。そのうえ、つけた点数を部下に納得してもらわなければならない。
複数の部下を持つ管理職さんが、一人ひとりの仕事をすべて見ることはできません。さまざまな強みや特性を持つ人を、同じ物差しの点数に置き換えることにも限界があります。
人を点数に置き換えることへの違和感は、私が自己申告型給与制度に取り組むようになった原点でもあります。
憂鬱になるのは、管理職さんの力量が足りないからではなく、部下に誠実に向き合おうとしているからこそであり、人が人に客観的で公平な点数をつけることを前提にした従来型の人事制度の構造が招いていると思います。
経営者さんは「願い」と「人事制度」のあいだで違和感を抱えている
私がお話をうかがう経営者さんのなかには、点数をつける人事制度に違和感を持っている方がほとんどです。
社員さんとは、雇う側と雇われる側という関係を超えて、パートナーになっていきたい。一人ひとりに主体的な人生を歩んでほしい。そう願っているのに、人事制度のなかでは社員さんに点数をつけ、点数で給与を決めている。
願いと人事制度のあいだにあるギャップが、違和感の正体なのだと思います。ティール組織や自律分散型組織の世界観に共感している経営者さんほど、ギャップを強く感じるのかもしれません。
違和感を持つのは、社員さんを大切に思っているからこそだと感じています。
三つの立場の悩みは点数づけの構造から生まれる
三つの立場を並べると、社員さんは「点数を受け取る立場」で、管理職さんは「点数をつける立場」で、経営者さんは「点数で給与を決める人事制度を持つ立場」で悩んでいます。誰かが楽をして、誰かにしわ寄せがいっているわけではありません。
三者とも、人が人に点数をつけ、点数で給与が決まるという同じ構造のなかで悩んでいるのだと思います。
人事評価の悩みには、評価者研修や評価基準の見直しで対応することが多いと思います。どちらも納得感を高めようとする誠実な取り組みですし、効果が出る場面もあります。
ただ、評価者研修も評価基準の見直しも、点数のつけ方をより良くしようとするものです。点数をつける側と受け取る側に分かれ、点数で給与が決まるという構造は変わりません。構造が変わらなければ、三つの立場の悩みは形を変えて残り続けるのだと思います。
点数づけをやめると三つの立場は同じテーブルにつく
構造を変えるとは、人が人に点数をつけること自体をやめるということです。
人事評価の点数づけやランクづけをやめることは、「ノーレイティング」と呼ばれます(人事評価をすべてやめる場合だけでなく、ランクづけだけをやめる場合もあります)。私が2010年から取り組んでいる自己申告型給与制度は、ノーレイティングをさらに一歩進めて、給与を社員さんご本人の申告と対話によって決めていく人事制度です。
点数づけをやめると、三つの立場の役割が変わります。

社員さんは、従来型人事制度における「点数を受け取る立場」から、これからの貢献と給与額を「自分の言葉で申告する立場」になります。ご本人にとっても、自分の貢献に見合う給与額はなかなか分からないものです。だからこそ、対話のなかで一緒に探求していきます。
管理職さんは、「点数をつけて根拠を説明する役割」から、社員さんの申告を聴き、これからの貢献を「一緒に考える役割」へと変わります。これは本当に大きな変化で、従来型人事制度においては「査定者」として振る舞わなければならなかったことが、部下の人生を応援する関わりに集中することができるようになります。
経営者さんは、会社だけで給与を決めるという前提を手放し、社員さんの未来に期待をこめて「投資する立場」になります。簡単な決断ではなく、ものすごい勇気が必要だと思います。ただ、手放した先には、願っていたパートナーとしての関係が見えてくるのだと感じています。
点数を渡す側と受け取る側に分かれていた三つの立場が、同じテーブルについて、これからの貢献と給与を語り合うようになります。
点数づけをやめれば悩みがなくなる、と言いたいわけではありません。対話には時間がかかりますし、考えがすれ違うこともありますから、今まで潜在化していた問題が顕在化することもあります。ただ、自分の意思を言葉にするなかで生まれる悩みは、手の届かないところで決まる点数への悩みとは質が違うと感じていて、対話を重ねることで新たな関係性が構築されていくように感じています。
おわりに
人事評価の悩みを、社員さんの意識や、管理職さんのスキルや、経営者さんの姿勢の問題として片づけないこと。人ではなく構造に目を向けることが、人事制度を見直す出発点になると考えています。
三つの立場が、これからのことを語り合う時間を楽しみに迎えられる。一人ひとりが「生きがい」を持って働ける会社が増えていくことを願って、これからも自己申告型給与制度に取り組んでいきます。
人事評価の点数づけを時間の視点から書いた記事はこちらです。↓
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