給与を自己申告する人事制度とは何か。仕組み・メリット・導入のポイント | 【自己申告型給与制度設計運用|生きがいラボ】

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給与を自己申告する人事制度とは何か。仕組み・メリット・導入のポイント

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こんにちは。生きがいラボの福留です。

「給与を自己申告する人事制度とは、具体的にどういう仕組みなのですか」というご質問をいただくことがあります。名前はすごくインパクトがあるけれど、実際の内容やどう運用しているのかが見えにくい、というお声です。

そこで今回は、私が長年取り組んできた自己申告型給与制度について、①仕組み、②支える3つの要素、③メリットとデメリット、④導入のポイント、の4点について、一度に整理してみたいと思います。

先に要点をお伝えします。この制度は、社員さんが希望額を言えばそのまま通る仕組みではありません。給与を過去の成果への対価ではなく未来への投資と捉え直し、その投資額を会社と社員さんが一緒に考えていくための対話の仕組みです。決め方のプロセスそのものを変えるところに、いちばんの特徴があります。

給与を自己申告する人事制度はご本人の申告から始まる

まず、仕組みの入り口から説明します。

自己申告型給与制度では、次期の給与額を考えるにあたって、社員さんご本人が会社に対して自分の考えを申告するところから始まります。

申告していただくのは、大きく3つです。

■ これからどんな貢献(人の役に立つこと)をしていくか
■ その貢献が、どれぐらいの給与に見合うか
■ これからどんな働き方をしたいか

「希望額を言えば、そのまま通ってしまうのでは」と誤解されるかもしれませんので、先に申し上げます。申告はゴールではなく、対話の出発点です。ご本人が言葉にした内容をテーブルに置いて、そこから会社と一緒に考えていきます。

従来の人事制度では、給与額は社員さんのいない場所で決まります。評価する側とされる側という役割が固定され、社員さんは決まった結果を後から受け取ります。自己申告型給与制度では、その順番が入れ替わります。ご本人が最初に語り、そこから対話が始まります。

自己申告型給与制度を支える3つの要素

自己申告型給与制度は、3つの要素で成り立っています。

■ 自己申告:給与額について、社員さんご本人が最初に自分の意思を表明する
■ 未来志向:過去の実績を採点するのではなく、これから何をしていくかを語り合う
■ 総合判断:数値化しやすいことだけで決めず、数値化しづらいことも対話のテーブルにあげる

一つ目の「自己申告」は、給与の決まり方に社員さんご本人も関わる、ということです。会社が決めた結果を伝えるのではなく、ご本人も意思決定の席につきます。

二つ目の「未来志向」は、この制度のなかでもっとも大きな転換だと感じています。一般的な人事制度のように、過去の実績への対価として給与を決めると、話し合いはどうしても「あのときの成果をどう点数にするか」という視点になります。一方で自己申告型給与制度では、これからどんな貢献をしていくかを語り合えば、同じ時間が未来を創る時間に変わります。

三つ目の総合判断は、会社が最後に総合的にジャッジする、という意味ではありません。数字で測れる貢献も、数字にならない日々の関わりも、どちらもテーブルにあげて、深い対話を通して一緒に探求していく、ということです。

給与を自己申告する人事制度の仕組みを示した図。社員さんが貢献と給与額と働き方の3点を申告し、会社と対話し、一緒に探求したうえで、未来への投資額として給与が決まる4つの流れと、自己申告・未来志向・総合判断という3つの要素。
給与を自己申告する人事制度は、社員さんご本人の申告から始まり、対話を重ねて未来への投資額を決めていきます。

従来の人事評価との違いは、結果ではなくプロセスにある

給与制度を見直したいというご相談をいただくとき、多くは「もっと公平な決め方にしたい」という願いから始まります。お気持ちはとてもよく分かります。

ただ、公平さには2つの種類があると考えると、話が整理しやすくなります。一つは「配分的公平」で、給与額そのものが妥当かどうかという公平さです。もう一つは「手続き的公平」で、その額がどんなプロセスで決まったかという公平さです。

従来の人事制度は、配分的公平をどこまでも追い求めてきたのだと思います。評価項目を細かくし、ランクを分け、点数の精度を高めていく。その努力に敬意はありますが、長年取り組んできた経験として、限界があると感じています。社員さんの努力のすべてを点数にすることは、実質的に不可能だからです。

さらに、納得感というのは当事者の主観です。どれだけ精緻な計算式をつくっても、自分のいない場所で決まったという事実が残るかぎり、無意識のレベルで違和感が残ります。人事評価や給与に不満を持つ方が多いのは、個人の意識の問題ではなく、公式の場で給与について語れない構造から生まれているのだと考えています。

だからこそ私は、結果の公平よりもプロセスの公平を追い求める方が建設的だと考えています。給与決定プロセスの民主化、と呼んでもいいかもしれません(一定の配分的公平性は必要だと思います)。

自己申告型給与制度のメリットは、社員さんと経営者さんの双方にある

制度の効能は、片側だけの利益として語らない方がいいと思っています。ここでは双方に分けて整理します。

社員さんご本人にとってのメリット。

■ 自分の給与について、公式の場で語る機会が生まれる
■ これから何をしていきたいかを、自分の言葉で考える時間が生まれる
■ 給与が「与えられるもの」から「自分も関わって決まるもの」に変わる

経営者さんにとってのメリット。

■ 社員さん一人ひとりが何を考えているかが、言葉として見えるようになる
■ 人事評価(過去の点数づけ)の精度を高める作業から解放され、未来の話に時間を使える
■ 雇う側と雇われる側という関係を超えて、パートナーとしての関係を創っていける

いちばん大きな変化は給与額そのものではないと感じています。申告のために自分の貢献と働き方を考える時間のなかで、社員さんの内側から「これをやってみたい」という情熱が湧き出てくる。その内面の変化こそが、この制度のほんとうの効能だと考えています。

自己申告型給与制度のデメリット

いいことばかりを書くつもりはありません。導入を検討されるときに、知っておいていただきたいこともあります。

■ 経営者さんにとって勇気がいる:給与を会社だけで決める、というやり方を手放すことになります
■ 対話に時間がかかる:短い時間で効率的に給与を決めたい場合には向きません
■ 情報の透明化が前提になる:業績などの組織情報を社員さんと共有していない状態では、申告のしようがありません
■ 初年度から完成しない:制度を入れてすぐに理想的な対話が起こるわけではありません
■人件費がアップする:制度の切り替え時には5~7%ぐらい人件費がアップします

とくにひとつめは大きいと思います。ただ、アメとムチで人はコントロールできるという前提そのものが、内発的動機づけを扱う心理学の知見からすると理に適っていません。一見すると突拍子もない取り組みに見えて、実は人間の性質に沿った取り組みなのだと考えています。

導入のポイントは、最初から完璧を求めないこと

では、どこから手をつけていけばいいのか。手順をひとつに決めることはできませんが、順番として大切にしていることが3つあります。

1.ありたい組織像を描く
会社を機械として捉えるのか、生命体や生態系として捉えるのか。経営者さんのなかでここが定まっていないと、制度だけを入れても長続きしません。

2.情報を透明にする
業績・経営状況・給与原資といった組織の情報を、できるかぎり共有します。判断の材料がないところに申告はありません。なお、個々人の給与額を公開するかどうかは、また別に慎重に考えるべきテーマだと思います。

3.対話の場を設計する
社員さんの申告を批判するという雰囲気ではなく、一緒に探求する場をつくることの方が大切です。ただでさえ、社員さんにとっては給与額を自分から申告することは、勇気がいることです。社員さんの申告をスタートにして、一緒に考えるという姿勢が大切です。

どれぐらいのスピード感や範囲で進めるかは、会社の状況に合わせて決めていただくのがいいと思います。一律のやり方をお勧めするつもりはありません。

給与を自己申告に変えると、どんなことが起きるか?

もう少し具体的に、制度が動きはじめると何が起きるのかを書いてみます。

たとえば、入社3年目の社員さんがいらっしゃるとします。入社3年目で担当業務のことは一通り把握していることもあり、日常業務ではそれほど新しい体験がなくなってきていると仮定しましょう。そんな状況では、従来の人事制度のもとでは、この社員さんは自分のキャリアや給与について「あきらめ」や「あせり」に近い感情を持っているかもしれません。なぜなら従来型の人事制度では、キャリアに関わる登用や将来の生活設計に関わる昇給は、年功的な運用になりやすく、自分の好奇心や創造性によって自分の人生が変わる期待を持ちづらいからです。

従来型の人事制度ではなく自己申告型給与制度では、この社員さんが自分で「次の半年はこういう貢献をしたい」「自分はこんなキャリアを進みたい」と提案したことによって、役割や給与が大きく変わる可能性があります。もしかしたら、最初は具体的な提案を考え出せなかったり、自分のキャリアを描けないかもしれません。何を書けばいいのか分からず、去年と同じ目標や金額を書いて出す、ということもあるでしょう。

それでも、対話を重ねるなかで少しずつ変わっていきます。自分がやりたいことと、会社が向かおうとしている方向が重なる場所を探すようになる。そうすると、今までやったことがないけど大切だと思う仕事にも、チャレンジする意欲が湧いてくるかもしれません。

若手の社員さんが自己申告型給与制度をきっかけに自分から動きはじめる。そんな場面に触れるたびに、給与額が上がったから頑張るのではなく、自分で決めたから頑張るという順番の変化が起きているのだと感じています。

おわりに

給与を自己申告する人事制度とは何か。一言でお答えするなら、ありのままの一人ひとりが尊重される組織観を、給与決定プロセスに落とし込んだ結果だとお伝えしたいと思います。

評価する側とされる側という固定した役割で点数を決めるための話し合いではなく、お互いの未来をテーマに対話する。給与というお金にまつわるテーマは感情が動きやすいからこそ、自分らしい人生を探求する対話の入り口になると考えています。

経営者さんと社員さんが対等なパートナーとして未来を語り合える会社が、もっと増えてほしい。そのためには給与の決め方そのものを変えていく必要があるという信念とともに、私はこの取り組みを10年以上続けてきました。

自己申告型給与制度についてもう少し詳しく知りたい方は、こちらもあわせてご覧ください。
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