人事制度が複雑になっていく原因
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いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。
これまで従来型の人事制度として次の5つの問題をご紹介しています。
① 働く喜びを奪う
② 自律心を阻害する
③ 成長意欲を減退させる
④ 社会貢献に目が向かなくなる
⑤ 複雑すぎて運用が難しい
今回は、5つ目の「制度の複雑化」について説明していきます。
※前回の記事「従来型の人事制度は「仕事の本質」を見失わせる」
点数をつけようとすると複雑になる
従来型人事制度は、その設計コンセプトによって複雑になる宿命があると言えます。
それは「評価と給与の連動」ということです。
昇給という金銭的報酬によって、社員さんに望ましい行動を起こさせるためには、社員さんが自分の昇給額に納得するだけの根拠がなければなりません。
その根拠とは、社員さんへの人事評価による点数です。
従来型人事制度がその目的通りに機能するためには、社員さんが納得する点数をつける仕組みが必要不可欠になるのです。
しかし、すべての人が納得するような点数をつけることは、果たして可能なのでしょうか。
私は極めて困難だと考えています。
なんらかの方法で、点数をつけることはできます。
たとえば、成果主義人事制度が典型的ですが、「目に見える成果」という社員さんの働きのごく一部分だけを切り取れば、それだけで評価点をつけることは可能ですし、目に見えるということで納得性も高いように思われがちです。
しかし、目に見える成果だけを評価の対象にすることが、適切だとは言いがたいと考えます。
成果には、社員さんの努力以外の要素(配属や担当など)も関係します。
これからはますますチームで仕事をすることが多くなりますから、本人以外の努力による成果ということもあります。
あるいは、成果はつくるが、社内でネガティブな発言を繰り返して、社風を悪化させている場合もあります。
そこで、成果だけではなく、スキルや人間性までも評価対象にしようということになりますが、スキルや人間性を「客観的」に判断することは非常に困難です。
また、給与決定の根拠にする都合上、同じ職種や等級では評価基準を統一しなければなりません。
これらの事情から、給与決定の根拠として適切な評価点をつけようとすると、評価制度は複雑にならざるを得ないのです。
評価制度が複雑になれば、それと連動する給与制度はさらに複雑になります。
結果として、何が何だか分からない複雑怪奇な人事制度が出来上がってしまうのです。
その根本的な原因は、評価と給与を連動させようとする従来型人事制度の設計コンセプトにあるのです。
人事コンサルタントも複雑化の原因になっている
もう1つ、人事制度が複雑になる大きな理由があります。
それは、人事コンサルタントの問題です。
私も人事コンサルタントですから思い当たることがありますが、多くの人事コンサルタントは、自分の知識をすべて使いたいという欲求に駆られてしまい、
その企業に合った制度をつくるよりも、自分が納得できる「美しい」制度をつくろうとする傾向があります。
確かに、複雑に入り組んだ人事制度というものは、「制度屋」としてはつくり甲斐があります。
しかし、それらは企業の状況を無視した自己満足に過ぎないと考えています。
あるいは、人事コンサルタントのなかには、自分が所属するファームが持っている人事制度のテンプレートをそのまま使って、金太郎アメのようにどの企業にもほぼ同じ人事制度を「納品」する人もいます。
それらのテンプレートは、大企業の人事制度をモデルにしているから、中小企業やベンチャー企業にとっては無用の長物です。
中小企業・ベンチャー企業の強みである機動性や柔軟性を阻害する原因になっています。
このように、評価と給与を連動させる従来型人事制度は、複雑にならざるを得ない宿命にあるのです。
特に、人事専任担当者がいない中小企業・ベンチャー企業にとっては、人事制度が複雑になれば、運用することが難しくなりますから、
人事制度はシンプルな方がよいのです。
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