等級制度と給与テーブルを廃止する
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いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。
人事制度の未来像に影響を与える経営環境の変化として、前回までに次の9つについて述べてきました。
① 金銭的報酬によるインセンティブが困難になる
② 職業人生が長期化する
③ 不安を抱える若年層が増える
④ 仕事とプライベートの境界がなくなる
⑤ 企業の内部と外部の境界がなくなる
⑥ 高度な専門技能と、専門分野以外での人的ネットワークが必要となる
⑦ 権力によるリーダーシップが成果を生まなくなる
⑧ 多様性を積極的に受容する必要性が高まる
⑨ 短期的な利益よりも社会貢献や持続可能性を重視する傾向が強まる
今回からはこれらの変化を踏まえて、人事制度がどのように変わる必要があるのかについて、私の考えを述べていきます。
※前回の記事「人事制度の未来像を決める社会の変化とは?」
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年功序列から抜け出せない
かつての日本的経営の三種の神器といわれた「年功序列」「終身雇用」「企業内組合」は、既にその役割を終えたと言われています。
かつて年功序列が効果を発揮したのは、①経済成長が継続する、②解雇されることがない(終身雇用)、という2つの「安心」が存在していたからです。
その「安心」が崩壊したことによって、年功序列に魅力を感じる人が少なくなっていきました。
働く人々の意識の変化に合わせて、企業の人事ポリシーのなかで「わが社は年功序列です」と謳っている企業は、ほとんどなくなったと言っていいでしょう。
しかし実際には、多くの会社では、年功序列的な人事処遇が残っています。
それはある意味では仕方がなく、従来型の人事制度を「しっかり」と運用すると、どうしても年功序列になってしまうのです。
その理由を説明したいと思います。
ちなみに、私は年功序列が必ずしも問題だとは思っていません。
一人ひとりの貢献に見合った形で、処遇が“結果的”に年功序列的になっているのならば、それは問題ないかと思います。
私が問題だと考えるのは、貢献に“見合わない”ような年功序列的な人事処遇になっている状態です。
等級制度と給与テーブルが年功序列を生んでいる
結論から申し上げると、多くの場合、年功序列を生んでいるのは「等級制度」と「給与テーブル」です。
人事制度は、等級制度・評価制度・給与制度の3つのサブシステムが連動している構造が基本にあります。
これらの3つのサブシステムに、採用や人材開発、タレントマネジメントなどが加わって、トータルとしての人事システムが形成されています。
多くの企業ではこの20~30年間に、人事制度が年功序列的な運用にならないような工夫をしてきました。
等級制度の軸を、昔は一般的だった「職能資格」をやめて、「職務」「役割」「責任」「ミッション」などに変えたり、
多段階だった等級の階層を少なくしてブロードバンド化するなどの工夫をしてきました。
しかし、その中身はというと、多くの場合は年功序列的な運用にならざるを得ない構造になっています。
多くの等級制度では、例えば2等級からいきなり5等級になるなどの「飛び級」ができない仕組みになっています。
なぜなら、1つ上の等級に上がろうとすると、現在の等級の「給与テーブル」のあるレベルまで到達している必要があったり、入学条件や卒業条件などがあったりすると、結局は年功序列的な運用になってしまうのです。
年功序列的な運用は社会の変化に応えられない
経済が右肩上がりで成長していた時代では、年功序列的な運用でも問題は生じませんでした。
先述のような「安心」があったからです。
社内での「出世競争」はあるにせよ、長く勤めれば給与は増えていくという安心が、年功序列的な運用を支えていました。
なぜなら、企業規模の拡大によってポストは増えていきますので、ある程度の役職ま
でならば誰でもなれた時代だったからです。
現在は、そういう時代ではありません。
職業人生が長期化していく一方で、年功序列的な人事制度だと若手社員の給与は低くなりますから、若手社員の不安はますます高まっていきます。
また、若年層には金銭的報酬では動機づけされない人が増えていて、「長いあいだ勤めたら給与が上がる」という、金銭的報酬が中心になっている構造そのものに魅力を感じないのです。
等級制度と給与制度を廃止する
多くの企業では、人事制度の設計に頭を悩ませているわけですが、特に等級制度と給与テーブルは設計するのが大変です。
設計するのも大変、しっかり運用しても効果がない、というのが等級制度と給与テーブルです。
では、どうすればいいかというと、「廃止」すればいいのです。
「廃止」が難しければ、等級制度にある複雑なルールを撤廃したり、給与テーブルの給与レンジはそのままでピッチ(号俸)をなくすだけでも良いと思います。
そもそも、給与テーブルのピッチなどは、過去数十年の標準的な給与モデルをもとにつくられていますので、これからの時代に合うはずがないのです。
当社のノーレイティング型人事制度は、等級制度も給与テーブルもありません。
その方が設計も簡単にできますし、運用も柔軟にできます。
ここまで、等級制度と給与テーブル(給与制度)を中心にしてきましたが、等級制度と給与テーブルが変われば「人事評価制度」も変わりますので、それは次回にお伝えしたいと思います。
※この記事のつづき「人事評価制度は嫌われる運命にある」
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