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人事制度の「構造」を変えなければならない理由

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いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。

人事制度の根本には、『望ましい行動に対して報酬を与えると、モチベーションが向上し、望ましい行動が再現・強化される』という思想があり、

金銭的報酬による「アメとムチ」によって、社員さんの行動を「コントロール」しようとする構造であると前回お伝えしました。

 

基本構造を変えなければ人事制度は変わらない

 

このように言うと、多くの経営者さんや人事担当者さんは、

「自社の人事制度はアメとムチで社員をコントロールすることを意図していない」

というご意見が出ると思います。

私がたくさんの中小企業・ベンチャー企業の経営者さんや人事担当者さんとコミュニケーションをとってきた経験のなかでも、ほとんどの経営者さん・人事担当者さんは「頑張ってくれた社員さんに報いたい」という愛情によって、人事制度を構築しておられます。

「社員さんの鼻先にニンジンをぶら下げて速く走らせたい」という意図をもって、人事制度を構築している経営者さん・人事担当者さんは少ないというのが私の実感です。

しかし、いくら企業側に社員さんをコントロールする意図がなくとも、人事制度の構造がそのメッセージを放っているのです。

社員さんの側には、「会社は自分を金で釣ろうとしている」と映るのです。

なぜなら、一般的な人事制度の根本に「人間は金銭的報酬によってコントロールできる」という設計思想が存在しているからです。

お金の力は想像以上に強力で、評価が給与に連動することで、社員さんは自分の給料だけに意識が向いてしまいます。

成果主義人事制度のデメリットが叫ばれるようになってから久しいですが、これまで人事制度に新たな価値を見いだそうとする動きも出てきました。

たとえば、

* 人材育成のための人事制度
* 社員さんが安心して働けるための人事制度
* 仕事が楽しくなる人事制度

などの取り組みですが、これらの試みは非常に意義のあることです。

しかし、いくら人事制度に新たな価値を与えようとしても、「評価と給与を連動させる」という基本構造がそのままでは、効果が半減されてしまいます。

まさにこのことは、私が人事制度のコンサルタントを志すようになったきっかけなのです。

 

人事制度は組織開発のOSにあたる

 

私は大学卒業後、中小企業に対して研修やコンサルティングを提供する会社で、法人営業を約十年間にわたり担当しました。

企業業績の向上や組織の活性化を目的として、企業に対して自社サービスを提案することが私の仕事でした。

研修やコンサルティングの品質面では、競合他社と比べても自信がありました。

ですから、研修に参加してくださった顧客企業の社員さんのほとんどは、研修が終了する頃にはモチベーションが向上していました。

しかし、そのモチベーションが、長く続かないことも多く見受けられました。

さまざまな要因が複雑に絡み合って、モチベーションダウンを引き起こしていたのですが、そのなかで私が致命的だと感じていたのが、「人事制度に問題がある」ということです。

マッキンゼー・アンド・カンパニーの7Sモデルでいうところの、「Skill(能力)」「Staff(人材)」「Style(経営スタイル・社風)」に変革をもたらそうとしても、「Strategy(戦略)」「Structure(構造)」「System(制度)」が旧態依然では変革が根づかないのです。

現在では、人間の本質的な価値に着目した組織開発の手法がたくさん存在しています。

ダイアログやワールドカフェ、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリ)、フューチャーセンター、マインドフルネス瞑想などの手法は、ダグラス・マグレガー氏のY理論や性善説を根本原理としています。

私は、これらの考え方に心から共感しています。

人間は誰しも、「成長したい」「貢献したい」という欲求を持っていると思っています。

これらの組織開発手法は、人間の素晴らしい部分を解放する取り組みですから、非常に意義のあることだと思います。

私が前職の会社で体験したように、これらの組織開発手法を実施すれば、非常に気持ちのよい体験ができるでしょう。

しかし、企業に根づくためには、人に関わるStructure(構造)を変えなければ長続きしません

PCで例えると、OSに当たる人事制度が旧態依然の「アメとムチ」の論理で設計されていると、いくら素晴らしいアプリをインストールしてもその性能が引き出されないのです。

人間には素晴らしい部分がある一方で、「楽をしたい」「自分さえ良ければよい」という、X理論や性悪説で言われるような部分も持ち合わせています。

一般的な人事制度の構造では、人間の負の部分を助長してしまうのです。

私は体験を通して、研修や組織開発などのアプリが素晴らしくても、OSである人事制度を根本から変えなければ、アプリの効果が激減することを肌で感じました。

これらのことから、「アメとムチ」を根本思想に持つこれまでの人事制度の基本構造を変革しなければならない、という問題意識を持つようになったのです。

等級制度や人事評価制度を廃止し、給与を自己申告する取り組みを始めたのは、このような背景があったのです。

 

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