「No Rating(ノーレイティング)」が生まれた背景
- カテゴリ:ノーレイティング(No Rating)
前回から、米国企業で導入が広まっている
「No Rating(ノーレイティング)」についてお伝えしています。
※前回のブログはコチラ「「No Rating(ノーレイティング)」の3つの特徴」
今回は、「No Rating」が生まれた背景について説明していきます。
■高まる内発的動機づけの重要性
米国企業が「No Rating」を採用する大きな理由として、
組織・個人のパフォーマンス(業績・成果)を高めるためには、
「内発的動機づけ」が必要不可欠になったということがあります。
内発的動機づけとは、
仕事が「楽しい」「おもしろい」「やりがいがある」というように、
仕事をすること自体が目的になっている状態です。
このことを、フロー理論のミハイ・チクセントミハイ氏は
「自己目的的」と呼んでいますが、
何か別の目的(報酬)のために仕事をしている状態ではなく、
仕事そのものが(心の)報酬になっていることをいいます。
その逆が「外発的動機づけ」ですが、
言葉の通り、外からの刺激(アメとムチ)で人を動かそうということです。
■内発的動機づけが高いパフォーマンスを生む
従来型人事制度は、
給与額やその根拠とされる評価点によって、
社員さまを組織の思う通りに動かそうという構造です。
それではパフォーマンスが高まらないことが明らかになり、
内発的動機づけを喚起するために「No Rating(ノーレイティング)」が考えられました。
つまり、「No Rating(ノーレイティング)」は、
今までの延長線上のコンセプトではなく、
従来型人事制度のまったく逆のコンセプトに基づいています。
さて次に、内発的動機づけが必要になった理由ですが、
創造性を発揮しなければならない仕事が増えた、ということです。
このことはずいぶん前から言われていたことですが、
成熟した経済のもとでは、成果をつくるには創意工夫が必要です。
創造性や主体性、情熱がなければ、
高いパフォーマンスを発揮し続けることが難しくなりました。
言い換えると、「仕事をやらされている」という意識では、
これからの社会では高い生産性は発揮できないのです。
■人間の本質に基づくNo Rating(ノーレイティング)
しかし一方で、人事制度の構造に目をうつすと、
完全に外発的動機づけによって「働かせよう」という仕組みです。
もし、経営者側にそんな意図がなかったとしても、
構造からは「お金で釣ろう」というメッセージが読み取れます。
かなり以前から、脳科学や心理学の研究によって、
外発的動機づけが創造性や主体性を奪うことは言われていましたが、
ようやく「No Rating(ノーレイティング)」によって、
それを人事制度に落とし込む動きが主流になってきたということです。
私は、この「No Rating(ノーレイティング)」の広まりは、
人事制度が人間の本質に近づく第一歩になると考えています。
特に、これからの日本においては、
内発的動機づけによる設計思想が人事の主流になっていくべきだと考えています。
その大きな理由として、2つのことが挙げられると考えていますが、
それは次回にお伝えしたいと思います。