理想の目標を設定する方法
- カテゴリ:ノーレイティング(No Rating)
いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。
前回は、一般的な目標管理制度がうまく機能しない理由について触れました。
ノーレイティング型人事制度では、目標管理はどのような「あり方」に変わるのかを、今回はお伝えしたいと思います。
一般論を長々と述べるよりも、一般的な目標管理と私が勧める目標管理の「何が違うのか」を中心テーマにしたいと思います。
前回の記事
「ほとんどの目標管理がうまくいかない理由」
理想の目標とは
企業のなかで目標管理を実施するプロセスは、一般的に次のような流れです。
① 計画 : 目標設定・計画立案
② 実行 : 計画の実行と進捗管理
③ 改善 : 計画と実績の差異評価・改善策立案
この3つを繰り返しながら、仕事の質を高めていくのが、目標管理のプロセスです。
3つのプロセスのそれぞれについて、一般的な人事制度とは違うノーレイティング型人事制度の特徴を見ていきたいと思います。
まずは、1番目の「計画」の段階について解説します。
ノーレイティング型人事制度では、理想的な目標のイメージがあります。
社員さんの「人生ビジョン」や「キャリアビジョン」と、企業が「社員さんに期待すること」が、完全に一致する目標を設定できれば、それが理想の目標です。
この理想に近づけていくことが、目標設定の最重要ポイントとなります。
企業も、上司も、社員さんも、目標管理に携わるすべての当事者が、この点を重要だと強く認識し、理想の目標設定に近づくために力を合わせなければ、この理想は実現されないでしょう。
目標を「共に創っていく」という意識が大事だと思います。
目標を共に創っていくという価値観で、企業と社員さんが「対話」を繰り返しながら、理想の目標を「探求」していくことが、ノーレイティング型人事制度における目標設定です。
実際には、理想の目標を見つけだすことは、並大抵のことではありません。
しかし、決してあきらめることなく、理想を目指して企業と社員さんが協力していくことが、真の信頼関係につながります。
そして、その対話をサポートするために、さまざまな工夫を凝らしていますので、それをこれから説明していきたいと思います。
目標への納得感を公式に扱う
ノーレイティング型人事制度での目標管理と、一般的な目標管理との違いは、目標に対する「感情」の部分を扱うかどうかになります。
「感情」とは何かというと、その目標に対して「本気で取り組もうと思っているのか」、あるいは「仕方なく取り組むのか」という目標への「納得感」のことです。
従来型の人事制度では、目標への納得感を扱うことを無意識にタブーとしてきたように思います。
社員さんが目標に納得しているかを「公式」に扱えば、組織としての統制が取れなくなる恐れがあると考えているからです。
たしかに、社員さんが目標への納得感を表明することで、企業と社員さんのベクトルが「いかにズレているか」が明らかになります。
社員さんの感情を公式に扱わないために、「仕事に感情を持ち込むな」という不文律も謳われています。
組織に所属する以上は、目標に納得しようがしまいが、それを遂行することが「責任」だという論理です。
この論理は、ある意味で正論だとも思います。
自分の感情をマネジメントするのは、社員さん本人の課題であって、企業側の課題ではないからです。
現状をどのように解釈するかは、一人ひとりの責任であり、極論をいうと、社員さんはどの企業に所属するかの選択の自由を持っているのだから、目標に納得できなければ、その企業を去ればよいという考え方もできます。
そういう意味で、「仕事に感情を持ち込むな」という考え一理あるとも思っています。
しかし、人間は感情に左右されるということも事実です。
自分の人生に意味があるとは思えない目標に対して、「それでも仕事だから全力でやれ」というのは人間の本質を無視している、と私は思います。
仮に、感情を押し殺して仕事に励んだとしても、いずれは限界がきます。
たとえ、目標を達成したとしても、社内で本心から喜んでいる人が誰もいないという異常な状況が起きます。
その状況は、社員さんにとっても企業にとっても、不幸なことです。
企業と社員さんが、事業活動を通してお互いに喜びを享受しようと思えば、ベクトルのズレが表面化する「リスク」を覚悟して、目標に対する納得感を「公式」に扱うことが必要です。
目標が人生ビジョンと一致するかを表明する
それを仕組みに落とし込むために、ノーレイティング型人事制度では、目標設定時に一つひとつの目標に対して、「人生ビジョンとの一致度」を社員さんが表明するという取り組みを行っています。
目標管理で使用するシート(以降は目標管理シートと呼びます)の目標記入欄に、「人生ビジョン一致度」という項目を設け、設定しようとしている目標が自分の人生ビジョン・キャリアビジョンに合致するかを自己評価します。
「人生ビジョン一致度」という名称や、「何段階で評価するか」などの細かいことは何でもよいのですが、「目標に納得感があるか」について「公式」に扱うことが大事なのです。
もし人生ビジョン一致度が高ければ、その目標を達成することで、社員さんの人生ビジョンも実現に近づくという、望ましい目標だということです。
それとは逆に、人生ビジョン一致度が低ければ、対話が必要だということを意味します。
人生ビジョン一致度が低いことは「悪い」ということではありません。
むしろ、企業と社員さんが「パートナー関係」を築くための課題が発見できたということですから、喜ぶべきことです。
上司と本人との対話によって「なぜ一致していないのか」を探求し、より一致度が高い目標を模索していくことが大切です。
ただ単に人事制度を整備したり、組織開発のワークショップを行ったりするだけでは、パートナー関係を築くことはできません。
お互いの違いを尊重しながら対話を根気強く継続することが、時間はかかるが最も確実な方法です。
社員さんの人生ビジョンとの一致度という「感情」の部分を公式に扱うのも、対話のテーマを明らかにするためです。
対話によって目標を設定する
目標設定時にもう一つ必要なのは、社員さんが設定した目標に対して、企業側の「納得感」について表明することです。
いくら社員さんがやりたいことでも、企業のビジョンに貢献することでなければ、ビジョンの実現に近づくことはできず、企業の存在意義がなくなってしまいます。
企業(上司)側の納得感を表明することを、制度に落とし込むと、目標管理シートの目標記入欄に、上司が記入する「期待一致度」という項目を設けるという取り組みになります。
もし期待一致度が高ければ、社員さんの人生ビジョンとも一致し、かつ企業が社員さんに期待することにも一致するので、理想の目標だということです。
それとは逆に、期待一致度が低ければ、お互いの思いを共有する対話が必要だということになります。
人生ビジョン一致度のところでも述べましたが、期待一致度が低いことは「悪い」ことではありません。
パートナー関係を築くための課題が発見できたということです。
理想の目標を探求する仕掛け
ここまでをまとめると、社員さん本人と企業(上司)側の目標に対する「納得感」を公式に表明することが重要だ、ということを述べてきました。
* 目標に対する社員側の納得感 = 人生ビジョン一致度
* 目標に対する企業側の納得感 = 期待一致度
納得感の表明によって、パートナー関係を築くための対話のテーマを明らかにし、お互いのビジョンが共に実現できるような理想の目標を探求することが、目標設定時に重要なポイントとなります。
ちなみにノーレイティング型人事制度では、目標達成率が給与に連動することがありませんから、従来型の目標管理のように、目標の「チャレンジ度」や「配分」などのような、点数をつけるために存在する項目が必要なくなります。
理想の目標を追求することに、全精力を注げるようになります。
もう一つ、目標設定についてノーレイティング型人事制度では異なる部分があります。
それは「チャレンジ」に対する意味合いです。
従来型の目標管理では、高い目標や新しい目標は敬遠される存在になりがちでした。
なぜなら、目標とは言いつつも実質はノルマだったからです。
ノーレイティング型人事制度では、高いレベルでの目標設定や、今までにない新しい取り組みは、「意欲の高さ」を表すことになります。
意欲にあふれる人生ビジョンを描いている社員さんは、おのずと挑戦的な目標になっていきます。
社員さん一人ひとりの思いを出発点にして目標が設定できれば、理想の目標に近づいていくと考えています。
この記事の続き
「目標達成率で評価するデメリット」
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