本当の信頼関係は対話することで生まれる
- カテゴリ:自己申告型給与制度
いつもありがとうございます。生きがいラボの福留です。
自己申告型給与制度が、従来型の給与制度とまったく違う点は、給与を「投資」だと位置づけていることです。
① 自己申告
② 未来志向
③ 総合判断
という3つの要素が、自己申告型給与制度のコンセプトです。
これまで1番目の「自己申告」と2番目の「未来志向」の説明をしましたので、今回は3番目の「総合判断」の説明をしたいと思います。
前回の記事
「人事評価による点数づけを廃止して生まれる変化」
「総合判断」とは
社員さんを「事業家」、会社を「投資家」だとイメージしてください。
投資家が、事業家に投資するかを判断するときには、事業内容だけが判断基準になるわけではありません。
事業家の使命感や志、理念、ビジョン、情熱、人間性などの、言葉では表現しきれない属人的な要素も大切なポイントとなります。
それに加えて、その企業の企業文化や社風、社会からのブランドイメージなども含まれます。
つまりは、一部だけを見るのではなく、総合的に判断するということです。
それに比べて、評価結果によって給与を決定する方法は、社員さんの一部分のみに着目することになります。
評価基準には載っていない「数値や言葉で言い表せないコト」で、大いに貢献している社員さんもおられます。
従来型の人事制度は、それらをことごとく無視することになるのです。
少し余談になりますが、だいぶ前にお話を聞いたある投資家さんは、企業に投資するかどうかの判断要素として、「応接室の時計の時刻が合っているか」「事務所や工場のトイレがキレイかどうか」なども見るとおっしゃっていました。
応接室の時計を合わせるという行為は、誰の職務でもなく、気づいた人がやるようなことです。
しかし、誰の職務でもない応接室の時計を合わせるという行為がしっかりとできているかどうかで、その企業のチームワークや社員さんの意識レベルが予想できるらしいのです。
今は電波時計で自動的に時刻が合うと思いますが。。。
工場やトイレの5Sができているかを見るのも、同じ理由からです。
事業に投資する時の「総合判断」という考え方を給与制度に適用すると、
「信頼できるかどうか」
という主観的な感覚も、給与を決定する要素になります。
同志社大学教授の太田肇さんは、その著書『日本的人事管理論』(中央経済社、2008年)のなかで、
数値化された評価よりも、言葉では表現できないような「評判」を人事決定に活かす道を示していますが、私もその考えに共感します。
わずか数十項目の評価基準によって、社員さんの貢献をすべて表すことなど不可能なのです。
対話が生み出すもの
この「総合判断」という考えに対して、社員さんから「どうすれば給料が上がるのか」という質問が出てくると思いますが、その発想がすでに依存的と言わざるを得ません。
「どうしたら信頼されるのか」ということに、絶対的な正解などありません。
期待される以上の貢献をつくり続けたり、誠実に仕事に取り組み続けることによって、少しずつ信頼を積み重ねていくしかないのです。
「何をしたら良いのか示してほしい」という意識を、捨てる必要があります。
給与制度に「総合判断」という考え方を導入するならば、企業(経営者・上司)と社員さんが忍耐強く「対話」する必要が出てきます。
言葉や数値で言い表せない要素を共有することが、お互いのためになるからです。
給与制度に対しては、「自動的に社員が納得する給与額をはじき出してほしい」という企業側の要望もありますが、それは不可能です。
お互いが納得できるような給与額を自動的にはじき出す仕組みがあれば、時間がかかる対話をする必要もないのでしょうが、そのような仕組みをつくることなど不可能です。
しかも、もしそのような仕組みができたとしても、会社と社員さんがお互いを尊重するパートナー関係は構築することにはつながりません。
これも夫婦関係で例えると分かりやすいのですが、夫婦が対話することなく、何かしらの仕組みによって家族の大切な意思決定が行われたとして、それが夫婦の信頼関係につながるでしょうか?
つながるはずがありません。
お互いを尊重しつつ、忍耐強く「対話」を重ねることなくして、本当の信頼関係は得られないのです。
給与に「投資」のコンセプトを導入することで、対話によって給与を決定する必要性が生じ、それが信頼関係、パートナー関係につながっていくのです。
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