理想の給与制度とは?
- カテゴリ:自己申告型給与制度
今回から数回にわたって、
「給与制度」についての私の考えを発信していきたいと思います。
私が提唱する「No Rating(ノーレイティング)型人事制度」が、
従来型人事制度と最も大きく異なるポイントは、
「評価と給与が分離している」
ということです。
一般的な人事制度のように、評価制度で社員さんに点数をつけて、
その点数に連動した処遇(昇給額・賞与額)に差を設けることが、
いかに社員さんのモチベーションに悪影響を与えるかについては、
心理学や脳科学によって、学術的に証明されています。
人事に携わる方々に「評価と給与の分離」の考え方を説明しても、
学術的に理に適っていることもあり、ほとんどの場合はご納得いただけます。
給与決定に人事評価を使わない
しかし同時に、「どうやって給料を決めるの?」とほとんどの方が疑問に思われます。
その疑問は当然で、「給料は評価結果によって決める」ということが、
人事制度の世界では当たり前の常識だからです。
今回から数回かけて、「評価と給与の分離」についての最大の疑問点である
「人事評価を使わずに給与をどうやって決めるのか?」
について述べていきたいと思います。
理想の給与制度とは?
まず、大前提として考えなければならないのは、
『理想の給与制度とはどんな制度なのか?』
ということです。
「理想」ということですから、
□ 全社員さんが給与額に大満足し、感謝の気持ちを持っている
□ 会社が長期的に支払い続けられる人件費枠に収まっている
という、少なくともこの2つの条件を満たしていると言えます。
これまで人事制度に携わってきた人たちは、
この2つの条件を満たすような人事制度を構築するために、
職務遂行能力、コンピテンシー、職務、役割、責任、成果
などのさまざまな評価基準(給与額の根拠)を考案したり、
経営成績を透明化して、人件費(主には賞与原資)の妥当性を理解してもらおうとしたり、
ありとあらゆる工夫を行ってきたわけです。
すこし乱暴に断定してしまうならば、人事制度の歴史とは、
『理想の給与額を算出する仕組み』
を追い求めてきた歴史である、と言っても過言ではありません。
言い換えるならば、
理想の給与制度が「存在する」という立場を採ってきたということです。
理想の給与制度など存在しない
しかし、私はまったく逆の考えであり、No Rating(ノーレイティング)型人事制度では、
☆ 理想の給与制度など「ない」「ありえない」
☆ 給与についての不満は決してなくならず、どんなに制度を工夫しても、全社員が満足することなどない
という立場を採ります。
なぜ、私がそういう立場を採るに至ったかの理由については、
少々長くなってきましたので、次回に述べたいと思います。