給与制度の未来:自律分散型への変革を支える人事のあり方
- カテゴリ:自己申告型給与制度
画一的な評価基準で人事評価を行い、その結果が給与額に反映される従来型の人事制度は、現在の社会では機能しなくなりつつあるように思います。社員さんのモチベーションが自然と高まり、自分の能力を最大限に発揮したいと思えるには、従来の枠組みを超えた、自律分散型の組織運営を目指すことが有効な方法です。本記事では、自己申告型給与制度やノーレイティングといった革新的なアイデア、そして組織文化改革の必要性について考察し、組織と個人の成長を促進する給与制度の未来を探ります。
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変革を求められる人事制度・給与制度
従来のトップダウン型の給与制度は、もはや時代遅れになりつつあります。画一的な評価基準に基づいた給与体系は、社員さんの能力や貢献度を適切に反映しきれず、モチベーションやパフォーマンスの低下を招く可能性が高くなっています。また、近年注目されている多様性を重視する働き方においては、個々の社員さんが抱える個別的な事情に柔軟に対応できる環境が大切であり、その環境がそれぞれの能力を最大限に引き出すことにつながります。その方向性で組織運営のあり方を考えると、自律分散型の組織運営にたどり着きます。
自律分散型とは、個々の社員さんが自分の能力や価値観に基づいて自律的に働き、その成果に対して責任を持つ組織形態です。従来のトップダウン型組織とは対照的に、組織の目的や目標に貢献するために、社員さん一人ひとりが主体的に行動していきます。このような組織形態では、従来の画一的でトップダウン型の人事制度や給与制度は機能しません。社員さんの自律性を尊重する新しい形の給与制度が求められます。
ティール組織とは?その概念と進化する働き方
ここでも何度もご紹介していますが、自律分散型組織の進化形として近年注目されているのが「ティール組織」です。従来のピラミッド型の組織構造やトップダウン型のマネジメントスタイルにとらわれず、社員さん一人ひとりの自律性と、チームの自己組織化を重視した組織形態です。ティール組織では、個々の社員さんが主体的に行動し、組織の目的や目標に貢献することを目指しています。
ティール組織は、従来の「命令と服従」型の組織構造から脱却し、個々の社員さんが自発的に行動することで、組織全体の創造性やイノベーションが促進され、より高いパフォーマンスにつながります。
次の章では、ティール組織における給与制度の革新について、具体的な事例を交えながら詳しく解説していきます。
納得感と自律:ティール組織における給与制度の革新
ティール組織における人事制度・給与制度は、従来型の人事制度・給与制度とは180度反対のコンセプトになります。「組織が給与を決める」という従来型のコンセプトから、「社員さんが給与を決める」というコンセプトへの変革です。
このコンセプトの変革は、かなり大胆な変化になりますが、組織を自律分散型で運営していこうとすると、当然の帰結です。自律分散型の組織運営をしながら、給与については意見を言うこともできないというのは、あまりにも矛盾しています。私は、これを「給与決定プロセスの民主化」と呼んでいますが、自律分散型組織においては、当事者が意見を言う場があるということは必要不可欠なことです。
自律分散型組織における人事の役割:従来の枠組みを超えて
ティール組織においては、従来の人事部門が担ってきた役割は大きく変化していきます。従来の管理・監督といった、社員さんをコントロールする役割から、社員さんの成長と自主性を支援する役割へと、その重点がシフトしていきます。
自律分散型の組織では、社員さん一人ひとりが自分の仕事に対して責任を持ち、主体的に行動することが求められます。そのため、人事部門は、社員さんが主体的に仕事に取り組めるような環境を提供し、能力開発やキャリアアップを支援する役割を担います。従来のトップダウン型の管理ではなく、社員さんの自律性を尊重し、その能力を最大限に引き出すためのサポート体制を構築することが重要となります。
具体的には、人事部門は以下のような役割を担うことになります。
・能力開発のための研修プログラムや学習機会の提供
・キャリアパスや目標設定の支援
・自己組織化を促進するためのツールや仕組みの導入
・社員さん同士のコミュニケーションや連携を促進するための場づくり
・社員さんの多様な働き方や貢献方法を支援する環境づくり
人事部門は、単に管理者として社員さんを管理するのではなく、社員さんの成長を支援し、組織全体のポテンシャルを引き出すためのファシリテーターとしての役割を担うことが求められます。ティール組織では、人事部門は従来の枠組みを超えて、社員さんの能力を最大限に引き出し、組織全体の成長につなげる役割を担っていく必要があるのです。
ティール組織における人事の進化
ティール組織における人事の役割は、従来の管理・監督といった枠組みから、社員さんの成長を支援する「ファシリテーター」へと大きく変化しています。それは、従来とは異なるより高度なスキルと意識改革が求められる、進化した役割と言えるでしょう。この章では、もう少し具体的に見ていきたいと思います。
従来型組織では、人事部門は社員さんの採用、評価、給与管理など、明確なルールに基づいた管理的な役割を担っていました。一方、ティール組織では、社員さん一人ひとりが自律的に行動し、自己実現を追求する環境づくりが求められます。そのため、人事部門は、単なる管理者ではなく、社員さんの成長を支援し、組織全体のポテンシャルを引き出すためのファシリテーターとして、より多岐にわたる役割を担う必要があります。
具体的には、以下のような点が挙げられます。
社員さんの能力開発とキャリアパス設計の支援:
個々の社員さんの強み、興味関心を理解し、最適な研修や学習機会を準備しておく必要があります。さらに、社員さんが自身のキャリアを主体的に設計できるよう、長期的なビジョンや目標設定を支援する役割も担います。
自己組織化を促進する仕組みづくり:
社員さんが主体的に仕事に取り組めるよう、チーム編成やプロジェクトマネジメントのサポートを行う必要があります。そのため、従来のピラミッド型の組織構造ではなく、自律的なチームやプロジェクトを形成するための仕組みが重要となります。
社員さん同士のコミュニケーションと連携の促進:
社員さん同士のつながりを深め、相互理解と協力関係を促進する必要があります。そのため、社内イベントやワークショップなどを企画し、コミュニケーション活性化を図る役割を担います。
組織文化の醸成と維持:
社員さんが組織目標達成のために一体感を持って行動できるよう、共通の価値観やビジョンを共有し、組織文化を醸成するハブとしての役割を担います。
このように、ティール組織における人事の役割は、従来の管理的な業務に加えて、社員さんの成長支援、組織文化醸成、コミュニケーション促進など、より幅広い領域を包括的に担う必要があります。これらの役割を効果的に果たすためには、高度なコミュニケーション能力、リーダーシップ、コーチングスキルなどが求められます。まさに、人事部門が進化し、組織全体の成長を牽引するキーパーソンとして活躍する時代と言えるでしょう。
まとめ
従来のトップダウン型人事制度は、社員さんの多様な能力や貢献を適切に反映することができず、機能不全に陥っています。自律分散型組織では、社員さんの自律性を尊重した新しい給与制度が必要となります。この視点で、自己申告型給与制度やノーレイティングなどの革新的なアイデアや、人事部門の役割の変化について考察しました。組織と個人の成長を促進する給与制度の未来を探ることで、お互いにとってより豊かな未来を実現できる可能性が広がります。
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